昨日予告(?)したとおり、今日は勝間和代さんのセミナーに行ってきた。開催場所は、紀伊国屋書店新宿南店内サザンシアター。収容人数は400人ほどで、客席はほとんど埋まっていたように思う。開催趣旨は、昨年10月に出版された『決算書の暗号を解け!』の出版記念&販売部数を伸ばそうということ。来月増刷した分で7万部になる(だったと思う)。私が持っているのは、1月22日付の第5刷だから今度は第6刷か第7刷くらいだろうか。セミナーの対象として想定されていたのは、著書を読んで理解できる程度に知識のある人。
講演内容は、この著書を中心に、書ききれなかったことや書籍にしてしまうにはちょっとはばかられることなども織り交ぜながらのものだった。配布レジュメから転記すると、
本日の内容
1.会計利益を鵜呑みにしたら、だまされる
2.赤字を黒字にするためのテクニック
3.経営者が益出しへと駆り立てられていく理由
4.ケーススタディ
5.もっと詳しく勉強したい人のために
具体的な内容は、販促のためにも購入して自分で読んだ方がよいと思うが、私にとってもっとも印象に残ったことをいくつか書いておく。
内容3.の「経営者が益出しへと駆り立てられていく企業の成長プロセスと株価の関係」のところで、第1段階から第4段階までを詳しく説明されたが、第4段階の「実質的な企業価値を上昇させるためのM&Aや新規事業を実施する時期」で話された、
「本業での成長が望めなくなると、経営者は高株価を利用して株式市場から積極的に新規調達を行い、大型のM&Aや新規事業投資を実行」する。そうすると、「投資銀行やIRコンサルタントのような業者が経営者に取引を頻繁に持ちかける。経営者に忠言する人も減るため、悪い情報は経営の上層部に届きにくくなり、結果的に経営者の判断は甘くなる」という。経営者は、正しい経営判断をするための適切な情報を得ることができなくなるため、結果として間違った判断をしてしまい、会社は間違った方向(最悪の場合は倒産など)に進んでいってしまう。
この話のなかで、経営者にどれだけ正しい情報が届くかということが、会社を経営的に健全な状態に保つカギとなる。つまり、会社の組織が経営者に対して、常に正しい情報提供をし続けることができるような状態にあるかどうかと、企業価値は密接な関係にあるというような趣旨の話に、強いインパクトがあった。それは、別のことばで言えば「内部統制の代理変数」になっているのだと。
たしかに、営利企業でなくとも、大きな組織になればなるほど、トップに組織内の正しい情報が届いていないのだなと感じさせられることが多い。たとえば、官僚組織。最近では、防衛省のイージス艦事故についても、そんなことなのではないか。出世したり有名人になってしまうと、媚びてくる人が周囲に増えてしまい、本当のことを言ってもらえなくなってしまうなどもありそうだ。身近な人間関係にしても、都合の悪い情報を伏せられてしまうような関係だと、やはり、その相手との関係そのものがよくないのだろうと反省すべきではないのか、などとも考えた。示唆に富む話だった。
昨日書いたように、私は著書をまだ読了しておらず、また会計学に関しては全くの無知だ。それにもかかわらず、本日の内容は、全部とは言わないが、大筋ではかなり理解できたと思う。その理由として、勝間さんが講演の対象者はすでに知識のある人としながらも、無知の人が何割かは含まれていると予想し、かなり噛み砕いて説明されていたこともあると思う。しかし、勝間さんの話のわかりやすさは、ご本人が別の著書でも主張されているように膨大な知識の中から厳選された知識をわかりやすいフレームワークを使ってお話になっているからではないかと感じた。だからこそ、これまでほとんど触れたことのない分野の話でも、最後まで関心をもって傾聴することができたのだと思う。誰のどういった内容の話でもいったん聞き出すと最後まで興味深く長時間にわたって傾聴してしまう私の性質もあるかもしれないが。話のうまさも含めて、久々に知的興奮を覚える講演を聞くことができてとても嬉しかった。人前で話をするのも仕事の一部である私にとっては、講演法としても参考になることが多かった。
最後に、ちょっとした素朴な疑問。
書店さんが書籍の内容をふまえた上での著者によるセミナーを開くのはいいとして、当日会場に集まるのは読了しているかどうかはともかく、その本自体は購入している人が多いのではないだろうか?そこで、当日会場で本を買った人にだけサインをするというそのサービスと、セミナー開催自体の目的との整合性というか企画意図がよくつかめない。書店サイドも出版社&著者も著書の販促に努力するのは当たり前でわかるのだけど、ということは事前に購入の上、参加した人ははじめから除外される。中にはサイン本ほしさに新たに購入する人もいるのかもしれないけども。
これは、今回の勝間さんのセミナーに対してだけ感じることではなく、いろんな書店さん開催のイベントで感じることなのだけど。初版出版・発売時にするものとはちょっと違う性質な気がして、単純に知りたいなと思った。
ともかく、今日は、やはり参加してよかった。終業後、出向くのが億劫に感じたときのために、昨日、どうしても参加しなければならないように「感想を書く」と書いておいたのも、少しは効果があったのかも。勝間さん流「しくみ化」をしてみた(笑)。効きます。
あと、ご著書も買って、この内容のセミナーにも参加するといいと思います、まだの方はぜひ。
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