『勝間式「利益の方程式」』を読んで考えたこと。その1
標記の書籍を読了した。評判どおり、おもしろい内容だった。内容を要約している書評はたくさんあるので、私は自分が感じたことや考えたことを自分のために書いておくことにする。
書名のとおり、利益を出すためにはどうすべきかを具体的に説明しているのだけども、これは、利益を出す商売をしている人や企業だけでなく、直接には利益を出さないような公共セクターにおいても、念頭においておくべき概念だと思う。というのは、公共セクターは自分が利益を出さなくても、誰かの利益から税金を集めて運営しているわけで、そのため、利益という概念からは非常に遠いところにいるからである。だからこそ、利益を出すことのむずかしさや手法を知っておくべきだし、無料とはいえ、せっかくある施設やサービスを利用しやすくするためには、どうあるべきかということを考える上での参考にすべきであると思うからだ。
「ファクトベース」や「仮説思考」は、利益を出す使命のある企業においても、勝間さんによれば、けっこうどんぶり勘定とでもいうような値段の付け方になっているということに驚く。これまで蓄積されてきている学術研究などの理論や実証研究が、せっかくあるのだから、それらに従ったやり方をそれぞれの業種に応用させて、それこそ、「仮説→実行→検証」を繰り返していくことで、利益を最大化するような努力こそ、求められていると思う。
この考え方は、政策立案の分野においても、言えることだと思う。以前、聞いた話なのだけども、行政機関では調査を盛んにやっているのにもかかわらず、その結果を政策立案過程に生かすことがあまり(というかほとんど)ないのだとか。本当なのか、にわかには信じられない気もするが、行政も政治もサービスなのだから、マーケティングの思想を持たなくては、いわゆる「顧客満足」を高めるどころか、不満や不信だけを高めてしまうのではないかと思う。内部では、それなりに、志をもって努力をしている人も多いのだと思うのに、外部からはいつも批判されなくてはならないのは、サービスの受け手の意見をあまり聞いていない、あるいは、聞いてはいても相手に伝わっていないことが理由ではないかと思う。
印象に残ったことば
成功というのは、成功するまで仮説→実行→検証を繰り返すこと
気づいたこと
勝間さんのご著書は、文字でありながら口語であるところが特徴的なところだと思う。最近では、読みやすい書籍はだいたいこういうお話口調で書かれてあることが多いけれども、そのお陰でさっと読めて簡単そうな印象を受けるのではないだろうか。ただし、簡単そうに書いてあることと、内容が薄いとか誰でも言えることだと思うのは間違い。むずかしいことをむずかしく説明することや、簡単なことを簡単に説明することは、誰にでもできるのだけど、むずかしいことを簡単そうに説明することは実際にはかなりむずかしいことなのだ。それにもかかわらず、簡単そうに書いてあるところをもって、誰にでも書けるというように一部の受け手は捉えてしまうことがある。ネット書店の書評などにもそういったコメントを読んだが、そう思うのなら、自分でやってみればよい。同じ水準のものを出せてはじめて、そういうことは言ってもよいことなのだ。
ただ、そういう風に受け取られやすい理由を考えてみれば、上記のようなことではないかと思う。私はこの著書を読んでいて感じたのは、プレゼンテーションをされているような気持ちになることだった。つまり、書き言葉ではなく、話し言葉による説明で、だからこそ、重要な点である「万能利益の方程式」が何度も出てくる。これは、前のページを参照させることもできるはずであるが、プレゼンテーションの場ではそういうことはしない。それを、書籍という形態に落としていると理解すると、文体にしろ、重要なことが繰り返される理由にしろ、納得できると思うのだ。
前のページにもどることなく、読みとおせることで、読者の読む時間の短縮(効率化)にも寄与していることは、言及されてはいないが、意図されたものではないだろうか。
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