『なぜ、デンマーク人は幸福な国をつくることに成功したのか どうして、日本では人が大切にされるシステムをつくれないのか』その1
本書は、『ふぇみん』という新聞の書評で見つけ、興味をもったので読んでみたが、読んでみてとてもよかったので、ここに書いておく。
女性の人権や福祉に関心の高い人間にとって、北欧の国というのは、ある意味「夢の国」「理想の国」のように感じ、よく持ち出されることが多いように感じるのだけど、本書を読んでもそういう感想を抱きがちではないかと思う。もちろん、これをこのまま日本の適用することがむずかしいのはわかっているのだけど。人口規模も違うし、資源もないし…とないことを挙げればきりがない。
何より、羨ましいのは、国民性だ。どうやれば、こういった国民性が養われるのだろうか。そういったことを考えつつ、読了して感じたことを記しておく。
著者は、大学時代に留学するつもりでデンマークにわたり、それ以来40年も、ずっと住み着いてしまった男性である。留学の目的が、福祉の研究だったことからわかるように、当時もデンマークが高福祉を実現している国だったことは、知られていたのだった。
デンマークは天然資源に乏しく、森林もなく、北の冷涼な気候のために農業にも向かないというないない尽くしの国だ。住居も、木材が国内で生産できないためレンガを積み立てた構造である。地震がないため、100年以上も前に建てられた家屋も現在でも使われているという。火災保険は強制加入、断熱効果を高めるための基準も厳しく定められている。
地方都市が健全な国は、国全体が健全
首都に本社を構えないことは、地方都市にとっても企業にとってもメリットがあります。土地の値上がりや通勤の渋滞がなく、国民経済の観点から見てもプラスです。日本では100万人くらいの地方都市が経済的・文化的に自立したシステムで成立していれば、人びとの通勤・通学の距離はバスでせいぜい20分程度「職住接近」が実現します。それによって。労働力移動の省エネルギーが可能になり、通勤や通学のストレスも解消されます。食料の供給もいわゆる「地産地消」が実現します。
著者は、デンマークでの事例をとりあげながらデンマーク国民が積極的に自分たちの問題を自分たちで解決しようとする姿勢を紹介している。そして、日本が抱える問題とそれに対する日本国民の姿勢(国民全体で解決しようとせず、一部の人に任せている状態)を対比させている。ここから、デンマーク国民がみんなで話し合い、問題解決をしようとする国民性が、より一層際立つ。読者は、なぜ、日本ではこういうことにならないのか、反対に、デンマーク国民はどうしてこういうことができるのかと自問することになるだろう。
デンマークの歴史や事情は、一般の日本人にとっては、情報自体があまりないために、疎いところが多いと思うのだが、上記の疑問は当然感じることだ。著者は、簡単にデンマークの歴史をたどることで、現在の国民性につながる理由を解釈している。
さまざまな問題に積極的にかかわり、国民全体で解決する必要があると考える人は、日本にもたくさんいるのではないかと、私は思っている。たぶん、そういう思いを持つ人と、実践に移す行動との間に、デンマークにはあるが、日本にはまだ少ない何らかの「しくみ」があるのかもしれない。
その「しくみ」を誰かが作れば、それに積極的に参加してくる人は、日本にも多くいるのだと信じる。その「しくみ」はどういうものなんだろう。「人が大切にされるシステム」は、日本ばかりでなく、どこの国でも地域でも必要だ。
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