リッチ・ウーマン
「金持ち父さん」シリーズの著者で有名なロバート・キヨサキ氏の妻であるキム・キヨサキ氏の著書。書名のとおり、女性のために書かれている投資入門書である。
基本的な思想は、金持ち父さんシリーズと同じなのだけども、もっとも強調されているのが、女性であるがゆえに抱えなくてはならない問題を丁寧に書いているということだ。本書の構成は、キムの大学時代の仲良しグループの女性たちと20年以上ぶりに再開することから始まる。大学時代には、特に、ライフスタイル上の違いはなく、同じように青春を謳歌していた仲間たちだったが、20年以上もの年月が彼女たちの境遇をかなり異なったものに変えていた。
ひとりは、ビジネスを始めて成功しているかに見えている女性。ひとりは、絵描きとして生きたいが、絵を描くのに十分な資金も時間もなく、生活のために時間を切り売りしなくてはならなくなっている葛藤に苦しむ女性。ひとりは、ジャーナリストとして活躍していたのに、結婚を機に専業主婦となり20年以上外での仕事をしないままに子育てと夫の収入に頼ってそれなりに余裕のある生活をしている女性。他にも、数人の同級生たちの現在の状況が紹介される。
結婚していたりしなかったり、子どもがいたりいなかったり、異なる環境にいる彼女たちに共通なのは、お金のために自由が手に入れられていないことと、お金のために他人にあれしろこれしろと言われなければならないということだった。
本書の副題にあるように、著者のキムは、他人に命令されることが大嫌い。それをされないためには、自分の自由を獲得すること、そのためには、人に雇われて働かなくてもよい自由を手に入れることを求めた。それには、働くか働かないかを選べるようになる必要がある。つまり、
不労所得>生活費
という状態に、自分の財政を変えていくことが求められるのだ。
キムは、同窓会で仲間に再開したときには、すでに、これを実現していたのだけども、他のみんなはそうではなかtった。そこで、キムが同級生たちにファイナンシャル・インテリジェンスをつけるための方法を教えるという形式で、読者に教育してくれるのだ。
投資に関して、さまざまな「危険神話」があることは、金持ち父さんシリーズでも指摘されていることだが、本書では、女性たちに見られる傾向を取り上げて解説している。女性は、一般に、大きな決断をする前に、自分の大切な人間のことを考えたり意見を聞いたりする傾向があるという。この場合で言えば、投資をするかどうかの決定に、夫などの投資に対する態度が大きく影響してしまう。
理想的には、夫やパートナーと一緒に金持ちになるための教育を受け、一緒に行動していけるとよいのだが、「投資は危険である」という「常識」のために、これに恵まれる女性はあまりいない。次に、よいのは、自分は一緒にはやらないが、理解はして、応援してくれるパートナーの存在だ。そして、女性が実際に始めてみると、その影響を受けて、自分も行動を起こしてくれるように変化する男性もいるのだ。
もっとも、ダメなのは、夫がよい顔をしないからという理由で、投資に関する教育や行動を始めるのをあきらめてしまうこと。こういう女性も、残念ながら、少なくない。
キムの教えは、何のために不労所得を得たいのかについて、教育を受け行動をし続けることのできるために必要不可欠な「強い動機」を見つけることに、大きな力点のあることだ。最初から成功することはありえず、ちょっとした失敗を体験したり、ファイナンシャル・インテリジェンスを得るための勉強は一生し続けなくてはならないために、ちょっとした思いつきなどでは続かないことが明らかだからだ。
そして、ゴールを決めること。それから、自分が今どこにいるのか正しく把握することが欠かせないことだと言う。自分の場所というのは、自分の裕福度をしっかりと理解することだ。裕福度とは、現在の生活レベルで生活し続けたとして、収入が一切なくなってしまったら、どのくらい生き延びられるのかという概念。
たとえば、生活費が月額30万円だったとして、貯金が100万円あったとすれば、3.3か月になる。
同級生たちは、自分の裕福度を計算してみて、愕然とする。中には、1月もたない人もいた。
投資と女性に関しては、「投資は女性には向かない」などという神話もあるのだが、キムは投資にかかわるデータを挙げて、むしろ、女性のほうが投資に向いていることを主張している。また、歴史的に、女性たちはこれまで金融や投資に関する教育を受ける機会が少なかったために知らないことが多く、知らなくても恥ずかしいと思わずに済むという。そこで、大切なことは「知らないことを知らないと言って、教えを請うことをためらわないこと」だという。「知らない」と言うことは、知ったかぶりをすることよりも、勇気がいることだ。そして、「知らない」ことを認め、教えてもらう姿勢をもつことは、この分野では欠かせないことなのだという。その意味でも、女性は、投資に向いているのだ。やっても見る前から、「女性だから向いていない」などと思わないことも大切だと思う。
私は、「女性に投資が向かない」などと思ったことはなかったが、キムが提示したデータを見るまでは、むしろ女性のほうが向いているということも知らなかった。
こういった実習を通して、それぞれが、不労所得を得るための行動に出る固い決心をし、お互いに励ましあうことを約束するというところで、話は終わるのだけども、彼女たちのうち、何人が実際にやりつづけることができるかは不明である。というのも、キムに教わる企画を立てたにもかかわらず、実際には、いろいろな言い訳をして、集まりに顔を出すこともしなかった女性もいたからだ。
結局のところ、いくら供給側が、よい教育や情報を提供しようとしても、受け取る側にそういう気持ちがなければ無駄になってしまう、ということなのだろう。金持ち父さんがよく言っていたという、「お金は考え方だ」という言葉が思い出される。「自分にはできない」と言うための言い訳は、探せばいくつもあるものだ。その考えに押しつぶされないように、自分の行動や気持ちをどうやってコントロールしていくか、そのためにも、最初に確固とした動機を見つけておかなくてはならないのだ、と理解した。
このことは、お金に関することだけではないと思う。すべての物事において、いかに、確固とした動機を見つけ出し、維持しつづけられるかということが、成功するか否かにかかっているのではないだろうか。忘れないようにしたい。
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