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2008年9月14日 (日)

『論争 日本のワーク・ライフ・バランス』を読んで。その4の2。

論争日本のワーク・ライフ・バランス

 ここからの続き。「男女平等とワーク・ライフ・バラス:統計的差別解消への道筋」と題し、山口一男さんと阿部正浩さんが講演。樋口美雄さんがモデレータを務めておられる。

 第4セッション後半。阿部報告は「企業の女性活用と男女間賃金格差」と題されている。同一属性の男女にどれだけの賃金格差があるのかを見るために、学歴と企業規模を同一にして、年齢階級別に男女間賃金格差を算出している。そこからは、若いうちは企業規模も学歴もあまり格差は大きくないが、30歳代になると大きな格差ができていることがわかるという。また、過去20年間の推移を見ると、最近になるほど、少しながらも格差が縮小の傾向がある。これは日本の特有のことではなく、イギリスやフランスでも同じ構造をもつ。

 同一属性にもかかわらず、なぜ年齢とともに男女間で格差が拡大するのか。これは、人的資本蓄積の男女間格差と統計的差別が挙げられる。ここで、前者にはミンサーとポラチェックの理論を紹介し、後者にはフェルプスやアローの研究を紹介している。

 フェルプスやアローの議論から、企業が危険回避的な行動をとる場合は、「能力のばらつき」が小さいグループから採用しようとする。能力の平均値が同じでも、ばらつきに差がある場合には、ばらつきの小さいグループが選好されるというところが興味深い。

 ここの「能力のばらつき」で言う「能力」とはどういったことを意味しているのかがよくわからない。

 平均勤続年数の違いが統計的差別を生むのはよくわかる。「能力」のなかに「長期間勤続できる条件」が入り込んでいるとすれば、このばらつきも男女で顕著である現状では、機会を均等にしにくくなってしまう。勤続しているほど教育投資を受ける機会も増えるため、単純には切り離せないことがむずかしいところなのかもしれない。

 報告では、最近の日本(大)企業のポジティブ・アクションやWLB施策が、人的資本格差や統計的差別の回避に貢献する可能性について言及されている。企業の人事施策は男女間賃金格差にどのような影響を与えているのかを明らかにしようと試みている。分析の結果からは、「男女間賃金格差の企業間差異は人事・労務管理のあり方次第」になるという。

 WLBやポジ・アクがどのように影響しているかの検証がおもしろかった。WLB施策のみ、あるいは、ポジ・アク施策のみでは、男女間賃金格差の縮小に貢献しない、両方とも取り入れていることが格差の縮小に効果があるらしい。

 山口報告とも重なるが、不確定要素を多くもつ集団のほうが、採用その他の機会において統計的差別を受けやすい。これは、別の言い方をすれば、多様性をもつ集団に機会を与えることを忌避しがちな傾向を意味すると思う。男女においては、女性のほうがライフスタイルの多様性をもっている(というか、そのようにせざるをえない状況に置かれている)。反対に、男性は画一的なライフスタイルを強いられている。そのために、労働の場においては、男性集団はより画一的なワークスタイルを選択しつづけ、女性はより不確定要素を引き受け続けることでより多様なライフスタイルを生きざるを得ないような状況にい続けるしくみに組み込まれていると言える。

 「多様性の実現が活力ある社会の要」ということを、より多くの人や企業が認識するには、どのような方法があるのだろうか。これも、一般の人間の「環境適応的」な性質を考えれば、先に多様な人材を採用してみて、多様性のよさを認識することにつながる方法のほうが効果がありそうな気がする。

 多様性というと、性別や人種などを思い浮かべがちだが、ちょっと不思議な人などのことも入るのではないかと思う。「ちょっと不思議な人・物事」や「少し変わった人・物事」を怖がったり気味悪がったりすることなく、より大切にしたり、よりよく理解しようとしてみることで、自分の認識や世界が広がったり豊かになったりするような気がする。過去にも偉大な発明や功績を残した人たちは、当時は「変人」「おかしな人」と思われていたりする例も多い。不思議な人たちを許容できるような職場環境なら、生産性もおのずと上がるのではないかと思うのだけど。

 今後、人材の流動性が高まれば、よりよい人材ほど定着してもらうような努力が必要になってくる。WLBやポジ・アクはそのためのインセンティブを与える取り組みに位置づけられていくと思う。

 この報告でも、企業の人事・労務管理戦略が重要だとされていたが、人事部門のトップがどのくらいこのことを認識しているかで、その企業の将来が決まってくるということだろうか。

【質疑応答】

 WLBにも、従業員への福利厚生としての位置づけと人材活用としての位置づけの2通りあるというのがおもしろい。前者は従業員のために導入して(やって)いるという考え方が透けて見えるようだし、後者は企業経営にとってすでに欠かせないとの認識があるように思える。

OLたちの「レジスタンス」―サラリーマンとOLのパワーゲーム (中公新書)

 インセンティブ問題の話題に出てくる『OLたちのレジスタンス』。出てすぐくらいに読んだのだけど、おもしろかったです。著者の経歴にシカゴ大学とあった記憶はあるが、こういうところでつながりがあるとは思わなかった。ただ、インセンティブ問題が、働く意欲や生産性の向上などを削いでいく問題は、おもしろいでは済まされないことだと思うけれど。

 女性を管理職に登用する際の、「順序」をどうするかも、興味深い見解だと思う。すぐに登用せずに、教育訓練や配置転換などの育成の機会の平等を行ってから登用したらよいという阿部さんの考えと、ポストが能力を育てるという山口さんの考えとは両方とも一理あると思うからだ。

 私なら…。女性管理職候補に甘いと言われるかもしれないが、ポストに登用した後にも教育訓練とサポートをすることをしたいと思う。

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コメント

えふさん
  長きにわたって、丁寧な書評と感想をありがとう。
山口一男

えふさん
  長きにわたって、丁寧な書評と感想をありがとう。
山口一男

山口一男さん、

 こちらこそ、長きにわたって、拙いいろいろにおつきあいいただきまして、本当にありがとうございました。

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