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2008年10月 5日 (日)

『かもめ食堂』(書籍)を読むと、いろいろ謎が解けます。

かもめ食堂

『かもめ食堂』(群ようこ著、2006年1月刊)

 映画『かもめ食堂』についてはここここでも書いたが、設定上のさまざまな謎があった。とくに、かもめ食堂のオーナー女性サチエさんについては、フィンランドで食堂を開こうと思った理由や資金的な問題は映画では謎のままだった。原作に忠実に制作されたのではないかと思っていたため、原作でもそこは謎のままかと思っていたものの、実際に読んでみなくてはわからないと思いなおし、読んでみた。

 まず、映画とはずいぶん違い、上記の点についてもフィンランドに来る前の状況についても詳しく描写してあるのに驚いた。そして、設定についても、資金調達面に関して、ちょっと笑えた。

 以下、サチエさんにインタビューしました。

えふ:サチエさんはどうしてフィンランドを選んだんですか?

サチエ:父が日本で古武道を教えているのですが、フィンランド人青年が父の元にいたことがあり、私も子どもの頃にヘルシンキに行ったことがあるんですよ、1週間の旅行でしたけど。ヘルシンキにはそのときの知り合いが住んでいたので、店を開くときにも情報収集と保証人を頼むことができました。

え:フィンランドで日本食にしたのはなぜですか?

サ:日本ではだんだんきちんとした日本食を出す飲食店が減ってしまい、日本人の味覚もきちんと出汁をとって丁寧に味付けした薄味でもおいしい食べ物の味を理解する人も減ってしまっていました。おいしくない素材を濃い味付けにして出す店が多くなり、こんなところで店を開いても、私の作る料理を理解してもらえないと思い、日本から出て外国に行こうと思ったんです。

え:立ち入ったことを伺いますけど、資金はどうしたんですか?

サ:いえいえ。大卒後働いて質素に暮らして貯金はしていたんですが、渡航と開店資金には到底足りず、子どもの頃から恵まれていた「くじ運」を信じて宝くじを購入しました。数回の失敗にも諦めなかったため、うそみたいですけど、1億円が当たったんですよ。

え:! それはすごいですね。そのくじ運は私も欲しいのですが、どうすればそのような力が持てるんですかね?

サ:そうですねぇ、これは神から授かった力ですからね。くじに当たっても免疫がないと死んでしまうかもしれません。

え:……。ご自宅で夜に膝を使って前後に歩く動きがありますけど、あれはなんですか?

サ:ああ、あれは合気道で「膝行法(しっこうほう)」と言うんです。座り技の基本なんです。

え:へぇ…。言葉はどうして習得したのですか?

サ:フィン語はむずかしいのですが、構文丸暗記で乗り切りました。

え:ところで、この周辺のフィンランド人は、サチエさんのことを「東洋の子ども」と思っていて、かもめ食堂のことをひそかに「子ども食堂」と呼んでいるらしいんですけど、実際のところ、おいくつなのか年齢を聞いてもいいですか?

サ:子ども食堂…。あ、年齢は38です。ついでに身長も言うと154センチなんですよ。でも、若づくりはしてないですよ。

え:あんまりお客さんが来ない間でも、毎日きちんと生活してお店でもお皿を磨いたりして、淡々と生活しておられるように見えましたが、どうすればそのような自律的な生活ができるのでしょう?

サ:はい、おそらく父の影響が大きいと思います。古武道の達人で指導者だったのですが、その父の口癖が「人生すべて修行」だったんです。道場にも紙に書いて貼ってありました。また、母が私が12歳のときに交通事故で亡くなったのですが、葬式でも父は「人前では泣くな」と言いました。まぁ、それをなんとなく守っているというか。あまり人前では困ったり苦労しているところを見せないようにしているのかもしれません。

(つづく、かも)

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コメント

えふさん
  「そうぞう」カテゴリーの記事なので、何処までが原作で、どこまでがえふさんの想像なのか、分かりませんが。資金が「宝くじが当たった」が原作にあるとすると、えふさんの「思いもかけぬ遺産相続があった」というかっての想像と大差ありませんね。
  ヨガでなく合気道だということも分かりました。これも大差はないですが。
  自律的な暮らしは「古武道の父の影響」ですか。これではますますフィンランドは関係なさそうです。「謎がとけるにつれ」てやっぱり日本人である作家が勝手に思い描いた物語の世界の話という気がします。薄味の上品な日本食が日本よりフィンランドで評価されるとは思えません。北欧食は概して大味です。

山口一男さん、コメントありがとうございます。

 私の想像は、インタビューをしたというところのみで、その他の情報(サチエさんの回答)は原作からとりました。
 おっしゃるとおり、フィンランドは関係ないのですが、映画よりはそのことに説明をつけようとしているところを少し評価してもよいかと。宝くじなどかなり強引なのですけども(笑)。
 北欧の食事は、北国でもあり塩味が効いた濃い味のイメージですが、食べたことないのでよくわかりません。コーヒーとシナモンロールなど、日本食とはいえないものにはオーダーが入るものの、日本食メニューが大人気になることは考えにくいですね。

 主人公サチエさんはヨガはしませんが、映画では片桐はいりさんが演じていたミドリさんがヨガをする場面がありました。

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