2008年10月22日付東京新聞(ここ)で取り上げられた、インドの少女の状況を描いたドキュメンタリーを観てきました。
このイベントの主催は、日本にも事務局をもつ国際NGOで、日本の団体はプラン・ジャパン(ここ)と言います。
プラン・ジャパン 秋の映像上映会 「Is this life? ~インドの女の子たちの現実」(ここ)と題されていました。
先月、東京新聞と読売新聞に続いて取り上げられたこともあり、当初予想していたよりもたくさんの視聴希望者の申し込みがあったということでした。それで、2日予定されていた上映会ですが、急遽、予定を増やして19日夜の時間帯にも開催することになり、私も参加できたのでした。
平日なので、多くの人は仕事帰りだったと思うのですが、もともと定員一杯になる予定で、そんなに広くない部屋に並べることができるだけの椅子を配置してありました。時間の途中で遅れて到着した人たちは5人ばかり立ち見をされていました。
このようなことから考えて、かなり高い関心をもたれていることがわかりました。
上映会は、最初に、プラン・ジャパンの概要や活動内容の紹介があり、上映される6本の短い作品がどのような意図で制作されたのかなども簡単に説明してくださいました。フィルムは、インドの小学生くらいの子どもがナレーターを務める作品もありました。
インドという国に関しても、簡単に説明を受けたのですが、印象に残ったのは、男女格差が非常に大きい点。教育を受けられるかどうかもですが、もっとも基本的な識字率について、全人口で男性が52%、女性が27%だそうです。さらに、インドでは子どもの13人に1人が5歳の誕生日を迎えることができない現実。
これらに対処しようと、「途上国の女の子に笑顔を!キャンペーン Because I am a girl」(特設サイトはここ)を展開しているそうです。
上映された6作品についても、印象に残った点や特に気になったところを簡単に書いておきます。
女の子が学校に行けないのは、過重な家事が義務付けられているからですが、水汲みが女の子の仕事とされ一日かけて出かけて水を汲んで戻らなければならないことや薪を集めに山に行かなくてはならないことも、女の子の仕事とされています。これらは結婚するまで毎日課されることだとか。
別の作品では、貧しい家ではすぐに裕福になることを目的として11,12歳の女の子に売春をさせているところがあるそうです。しかし、現実には裕福になる例はないのだそうです。
ジャナットという名の女の子は、父の母に対する暴力(DV)の結果、母が焼身自殺を図って亡くなってしまったのですが、自殺の場面を目撃しました。ひどい話です。貧困家庭では、父や兄など家族の男性成員から性的搾取を受けている女の子も多く、家の中も決して安全で安心に暮らせる場所ではありませんが、家の外でも通りすがりの成人男性からレイプされる危険とともに生きているのだとか。これでは、居場所がありませんね。ナスリンという名前の女性は、夫に別に妻子がいたことがわかったので、それについて言及したら、怒った夫に暴力をふるわれたあげく、強い酸を顔にかけられたそうです。これは、acid burningと呼ばれて問題視されていることではありますが、実際に、こんな目に遭っている女性がいるということが、実感的にはなかなか理解できないです。
4つ目の話は、結婚にかかわる持参金の話。男性側が「花嫁代」を払う習慣と、女性側が「持参金(ダウリ)」を払う習慣とがあるようですが、親の世代では「花嫁代」を払っていたのに、自分の世代では「持参金」を払う習慣にかわったとか。
5つ目は、「神の妻」として生きる女性の話でした。他のことは、これまでにも多少知っていることではあったのですが、これについては初めて聞く話で衝撃を受けました。「神の妻」は現地語では「ジョギニ」と呼ばれているもので、これになってしまうと、人として生きることが許されないのだそうです。簡単に言うと、村の男性たち全員のための性的な利用資源となることです。つまり、いわゆる村中の男性の妻で、伝統の性的搾取的な慣習とでも言うのでしょうか。貧しい家の女の子が選ばれるようです。そのような存在を「神の妻」として、ある意味持ち上げるような表現は、どこかの国でも「菩薩」というのと似ていますね。私には二重の意味で嫌な気持ちになることでした。ひとつは、女性を性的に搾取することが存在していることに対して。もうひとつは、それを「神の妻」と美化してしまう感性に対して。
6つ目は最後でしたが、多少希望のもてる内容でした。プログラムの構成としては、最後にするのは正解だと思います。少女のための学習キャンプの話。キャンプは6ヶ月間で、この期間に小1~5の教育を受けるのだそうです。43の村から100人の女の子がやってきて、集団生活を送りながら、リテラシーにかかる部分だけでなく、もっと生活に密着した基本的なこと、たとえば、歯磨きをすることの意味、石鹸を使うなど、衛生にかかわる知識と具体的な方法の重要さを学ぶことも含まれます。さらに、全員で一緒に食事し眠る生活から、最初はカーストの違う者同士は避け合っていたのですが、徐々にカーストから自由になり、一緒に食べ眠るようになるそうです。キャンプに来ている少女の大部分はすでに「早すぎる結婚」をしているとか。「早すぎる結婚」問題は、弊害のひとつに、家事があるから学校へは行かせられない、つまり、教育が受けられないことなのですが、文字の読み書きだけでなく、先ほどの衛生のように、生活に必要な知恵を学ぶ場としても機能しているそうです。
そもそもの映像制作コンセプトがそうなのでしょうが、貧困であることと女性(女児)であること、そして、カースト制度とのかかわりなど複合的な差別を描いているものが多かったです。もっとも強く印象に残ったことばのひとつは、以下です。
貧困家庭の女の子は、生まれてくることが最大の罪。
【補完情報1】インドの男女格差指数について
「The Global Gender Gap Report 2008」と題した記事(2008年11月13日付ここ)でも、取り上げましたが、インドの「男女格差指数」については、少しだけ触れた程度でした。
今日は、もう少し情報を追加しておきます。
総合ランキングでは、113位(2008年)、114位(2007年)、98位(2006年)です。4つのsubindexでは、
Economic Participation and Opportunity------125位
Educational Attainment--------------------116位
Political Empowerment---------------------25位
Health and Survival-----------------------128位
【補完情報2】acid burningについて
ここのサイトに、acid burningについての情報がありました。パキスタンでは今でもこのようなことが起こったいるようです。一般に、acid burningとは、皮膚にかかれば少量でも皮膚に多大な損傷をもたらす強い酸(塩酸、硫酸、硝酸など)を女性の顔に向かってかけることで、女性の顔に相当の、場合によっては修復不可能なほどのダメージを与えることを目的として行われる行為です。gender-besed violenceとされているので、いわゆる「女性に対する暴力」の一形態として捉えてよいのだと思います。
サイト自体(トップはここ)は、honour killing、つまり、いわゆる「名誉殺人」に反対しやめさせようとする運動のキャンペーンサイトのようです。
【補完情報3】「神の妻」「ジョギニ」について
「神の妻」でググっても何も出てきませんでしたが、「jogini」で試してみると、ヒットしました。たとえば、ここでは、以下のように明確にプロスティチューションとしています。
jogini
Jogini are women forced into prostitution by a religious custom known as devadasi in India. Young girls are married to a local deity and afterwards it becomes their religious duty to provide sexual favors to the local men, usually those of the higher castes.
This religious practice was banned in 1988, but the law is not being enforced in all parts of India.
deityは、「神位、神格、神性」といった意味です。
最近のコメント