ライオンとねずみと猫。
ここで捕まえた猫に逃げられてしまったねずみであったが、別の猫の捕獲に成功。その猫を飼い始めたら、しばらくして、猫が妊娠していたことが判明し、ねずみ家に衝撃が走った。ねずみの収入では、1匹がせいぜいだと思われたからだ。
つれあいのねずみは、責めていると思われないように十分に配慮しながら、猫に尋ねた。「ねこさん、避妊はしなかったの?」 猫は、「そんなこと言い出したら、彼に嫌われちゃうから」と消え入りそうな声で言った。 つれあいのねずみは、猫の世界でも、dating violenceやDVが深刻な問題なのだと思った。
ねずみは困っていたが、ぐずぐずと結論を出さないうちに、猫は出産し、子猫も一緒に飼うことになってしまった。コミュニティ紙に貰い手を探す告知を載せたら、数匹貰われていったのだが、4匹が残った。
親と合わせて5匹も買うことになって、予定が狂ってしまったものの、子どもたちの情操教育に役立てていた。
ある日、母猫が「ねずみさん、私も子どもを育てるシングルマザーとして、自立して暮らしたいんだけど」と言った。ねずみは、「せっかく、うちの子どもたちも喜んでいるので、もう少し居てもらえないだろうか」と尋ねた。猫は少し考えている様子だったが、それを見ていたつれあいのねずみが発した、「あなた、このまま5匹を飼い続けるのは、うちでは無理よ」という鶴の一声で、猫たちは自立の道を模索するために、ステップハウスに越して行った。
今度はライオンを捕まえて飼おうとしたねずみだったが、飛び乗って捕まえたと思ったらライオンに気づかれ、逆に自分が捕まってしまうという失態をやらかした。
そこで、即興で思いついたストーリーをいろいろさまざまに説明して、なんとかライオンから逃れて帰ることができた。
やっとの思いで帰宅したと思ったのに、子どもたちからは、「ライオンが飼いたい。『お父さんが捕まえてきてやる』って言ったじゃん」と口々に言われた。このとき、ねずみ家には、未成年の子どもが20匹ほどおり、全員が一斉にまくし立てるので、うるさくてかなわないと思ったねずみは、再度挑戦せざるをえない心理状況に追い込まれた。
しばらく経って、ねずみは次こそは失敗できないぞと並々ならぬ決意をし、ライオンが普段油断して寝ている場所に向かった。
実は、前回の失敗のあと、ねずみはつれあいのねずみから、「あなた、猫を捕まえるのとはわけが違うのよ。何が敗因だったのかをちゃんと考えてはっきりさせた?敗因分析に信頼性と妥当性がないと、次も同じ失敗を繰り返すわよ」と厳しく指摘されていた。つれあいには日常生活を頼りきりで頭の上がらないねずみは、自分が何の戦略ももたず、気合いを入れればなんとかなるという精神論で立ち向かおうとしていたことに気がついて「ハッ」とした。
つれあいのねずみは、ねずみが「ハッ」とした様子を見て、敗因分析から次への傾向と対策まで一緒に考えてやらなければ、また失敗してしまうかもしれないと思った。そこで、ねずみたちはこの後集中的にセッションをして、これ以上はないというすばらしい計画を練り上げていたのだった。
2回目のチャレンジとなる当日、ねずみはつれあいのねずみから指導された、成功するためのイメージトレーニングをし、道具ももって、朝早く出かけて行った。ライオンが来る前に、現地に着いておかなくてはならなかったからだ。ねずみは計画通りの準備をし、木陰に隠れて、ライオンが来るのをじっと待った。
果たして、ライオンは、ねずみが捕まえようと待っているとは、つゆほども思わず、いつものように、のんびりとした油断丸出しの様子でやってきた。ここは、数年来、このライオンが気に入っているお昼寝場所だったのだ。ライオンがほとんど毎日のように来て、寝そべっているので、草むらにはくるりと円い形の跡ができている。
ライオンはいつものように、その円いところに座ろうとして、前足を伸ばした。その途端、天地がひっくり返り、からだが持ち上がるのを感じた。そう、ライオンは罠に囚われてしまったのだ。
定説では、この罠は人間の猟師が仕掛けたことになっているが、真相は違っていた。実際のところ、ねずみの罠だったのである。
ライオンがまんまと罠にかかり、ねずみは心のなかで「やったー!」と叫んだが、素知らぬふりでライオンの前に登場した。
その後の話は、みなさんのご存知のとおりである。アメリカではアメリカの、日本では日本のストーリーが展開されている。
罠を猟師が仕掛けたことにしてほしいとライオンが懇願したので、ねずみはそういうことにしてやることにした。ライオン世界では、死ぬよりも「メンツ」とかいうものが重要らしいと知っていたからだ。
ねずみの子どもの念願だったライオンを飼うことは、つれあいのねずみの英断により、取りやめになった。つれあいのねずみは、子どもたちに、親と言えどもできることとできないことがあること、なんでも子どもの言うことを聞くことが親の愛ではないと教えた。
子どもたちは、納得した。
ライオンは、油断大敵、と学んだ。そして、威張ってもいいことはない、と気がついた。
ねずみは、つれあいのねずみに対する尊敬の念を一層深めたが、依存し過ぎをちょっと反省して、朝のゴミ出しと風呂掃除を自分が主たる責任者としてやることにした。それから、子どもたちを寝かしつけた後や休日の朝起きたときに、つれあいのねずみにお茶やコーヒーを入れてきて、会話をすることを心がけるようにした。
ねずみの心がけは、ねずみが生涯を閉じるまで続いた。
ねずみは最期に思った。「人間じゃなくてよかった。何十年もは、とても無理だ」と。
(このテクストは、ジェンダー論のゼミで使われている(嘘))
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コメント
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えふさん
面白いですね。今度の話は社会性もあり、想像力もあり寓話になっています。ただ欲を言うとテンポがやや早すぎると感じます。今までのネコの想像話はのんびりした対話が基調でゆっくり読んで楽しめました。今度の話は対話がなく、テキストだけなので、ゆっくりするところがない分えふさんのいつもの持ち味がやや失われています。でも、もしいつものユーモアでなくウィットを主体とする新しい面白さを強調したい場合は知性だけでなくリズム感に訴える必要があるので、それを生かすにはえふさん独特のリズムを感じさせる文章を練るといいかも知れません。寓話好きの「素人作家」の感想ですが。
投稿: 山口一男 | 2008年11月18日 (火) 00時50分
山口一男さん
ありがとうございます。
なるほど、テンポがはやいですか。言われてみればそうかもしれません。急いで書いたから?違うか(笑)。
たしかに、これまでのねこの話とは、ずいぶん感じが違うかもしれませんね。まぁ、新しい方向性を探るというか(笑)。ご指摘感謝します。改訂する機会があれば、生かします。
私独特のリズム感を感じさせる文章ですかぁ、むずかしいですね。自分では自分のリズム感ってよくわかっていないので。
それにしても、コメントが的確でわかりやすいです。別のこともコメントしていただきたいくらい(笑)。テンポがはやい点については、別件でちょっと反省し、今日は少しゆっくり目にしました。
投稿: えふ | 2008年11月18日 (火) 21時53分