不思議な少年と、柳沢教授。
『不思議な少年 7』(山下和美著、2008年10月刊)
山下和美さんの作品は、私にとっては興味深いものが多いので、結構読んでいるような気がします。柳沢教授もその1つです。
『不思議な少年』は6巻までも読んだのですが、大分前で明確に内容は覚えていません。時空を超え、姿を自在に変えて、その時代に生きる人間たちの前に現れ、かかわりをもった人間に気づきを与えたり、不思議な経験をさせたりするところは、シリーズに共通するところです。また、内容がおもしろかったり考えさせられたりするのは、この度新刊の7と同じです。7巻を読んで特におもしろいと思ったことを中心に感想を書いておきます。ただし、ストーリーを説明してしまうと、まだ読んでいない場合に台無しになってしまいますので、やや抽象的になるかと思いますが。
7巻は、6つの話が収録されています。中でも「会社員Ⅰ」はおもしろかったです。会社員Ⅰが仕事帰りにしばしの涼しさを求めて立ち寄るバーでのお話。そのバーでは、バーテンダーになっている不思議な少年と、客である童話の中の登場人物たちが会話しているところに、会社員Ⅰが居合わせるという形になっています。童話は、白雪姫とシンデレラ。白雪姫の継母である女性と、シンデレラの継母に2人の義姉たち。童話の登場人物たちは、互いにストーリーの中で演じる役割について批判しあったりしています。それを、バーテンダーと会社員Ⅰが聞いている。この話は、最後におもしろいしかけがあるのですが、それは読んでのお楽しみということで。通常信じられている設定を別の視点から眺めるとどのように見えるか、それを考える上で参考になるものに思えました。
もう1つは、「ヨコハマ・リリィ」です。これは、おそらく映画『ヨコハマメリー』へのオマージュとでも言ってよいのではないかと私には思えました。『ヨコハマメリー』は2006年にミニシアターなどでヒットしロングランをした映画だそうです。私は情報は得ていましたが、実際にはDVDでもまだ観ていませんが。こちらの映画のメリーさんは実在した方のようです。
「ヨコハマ・リリィ」のほうは、戦後すぐに米軍兵士を相手に商売をしておられたリリィさんのお話で、メリーさんと同様に、ある人を待ち続ける日々を送っておられるというストーリー。当時から、その服装について明に暗にいろいろ言われるのですけども、気にしないで自分を貫くところは、素敵だと思いました。
『ヨコハマメリー』(DVD発売日: 2007/02/14)
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