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散歩の収穫。

  • こういう色もよいですね。
    散歩をしていて見つけた風景や動植物を記録しておくアルバム。不定期だけど、できるだけ更新を目指す。コメント歓迎。

田舎の風景

  • 東京に戻ります。
    2008年9月8日~11日までの、田舎での時間。

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2008年12月28日 (日)

年の瀬に、迷っています。その1

 年の瀬でみんながせわしなく家路を急いでおられます。私もやっとひとつの仕事は年内終わりになり、これから、家の片付けとか、年末らしき雑事に取りかからねばなりません。間に合うのか?いやあ、むずかしそうです。だいたい普段でもできないことを、年末に一気にやろうということ自体が無理なのです。最初からわかっているのですが。

 食糧を備蓄しておこうと買い物に出かけたのに、また、どこかよくわからないところに迷い込んでしまいました。まぁ、いつものことですが。しかし、近所のはずなのに、あまり見たことのない風景ですよ、また。困ったことです。おまけに、田舎でもないのに、さっきから誰も通りがかりませんよ。またか?また、不思議世界に足を踏み入れたのでしょうか。

 不思議世界の経験値がだんだん上がりつつある今日この頃です。きっと、しばらくすると、どこからか、ねこさんが現れるのではないでしょうか。そう思い、ねこさんが通りがかるのを待つことにしました。

 あっ、向こうから誰かが来られます。誰だろう?頭が丸いです。ねこさんだとしたら、スコティッシュホールド種か、その流れを先祖にもたれる系列の方でしょう。でも、全体の様子がちょっと違いますね。色も、ベージュっぽい。頭が丸くて耳がピンとしていない、ベージュのねこさん?そんなの、珍しい。

穴の中から『こんにちは』

えふ:あのう、すみませんが、

生き物:ん?なんですか?

え:あなたは、どなたですか?

生き物:名前ですか?名前はプレです。

え:あ、プレーリードッグさんですか?もしかすると?

プレーリードッグ:ええ、そうですよ。見ればわかるでしょ。

え:いや、すいませんでした。おっしゃるとおりです。見ればわかりますとも。

プ:おかしなことを言う人だな。

え:いや、まぁ、最近、ねこさんとの遭遇が多いものですから、今日は事前に、ねこさんとお会いするに違いないと決めつけていたせいで、知っているはずのプレーリーさんのお姿がすぐにはわかりませんでした。

プ:そうですか。……決めつけのもたらす視野狭窄については、あなたは十分知っているはずですのにね。

え:はい、そうでした。でも、知っていてもできないときもありますよ。

プ:まぁ、そうですね。

え:ところで、プレーリーさん、何をしているのですか?

プ:名前は、プレです。

え:あ、失礼しました。プレさん、何をしているのですか?

プ:家の掃除です。

え:いや、しかし、ここは路上ですけども?

プ:この下に、私たちの家があるんですよ。今、外にゴミを出しに出てきたところなんです。

え:ああ、そうなんですね。それで、おうちにはどこから入るのですか?私にはどこにおうちがあるのか、全くわからないのですが。

プ:うちに来ますか?掃除なら、やることはたくさんありますんで。

え:あ、ありがとうございます。おうちの様子はとても気になるのですが、掃除のお手伝いはあまり得意でもありませんし、私も自分のうちの掃除をしなくてはなりませんから。

プ:そうですか。残念ですね。今来ると、もれなくプレーリーの一家と知り合えるのに。

え:う~ん、魅惑的ですね。いや、しかし、私は掃除は…

プ:そうですね、掃除ができないと、うちに来てもらっても仕方ないですしね。

え:はい、残念ですが。……あの、掃除が終わるのはいつ頃でしょうか?

プ:そうですねぇ、うちは大晦日にまで大掃除をするような計画性のない生活はしないように、今年の年頭に家族で申し合わせたので、遅くとも30日には終わらせるつもりです。

え:それは、偉いですね。新年のうちに決めたことなんて、私なんか、なんだったのかすら、思い出せませんよ。

プ:それは、人間として、許されることなのですか?

え:う、プレさん、厳しい指摘ですね。おっしゃるとおりなのですが、年頭の目標をすぐに思い出せないくらいで、人間が失格になってしまうのは、あまりに厳しいのではないか、という気がします。

プ:それくらいの厳しさがないと、掃除も終わらないのですよ。

え:う

プ:ああ、大変だ。ゴミを捨てに来ただけなのに、戻って掃除を進めなくっちゃ。

え:ああ、時間をとってすみませんでした。あの、掃除が済んだら、お宅にお邪魔してもよいでしょうか?

プ:う~ん、そうだなぁ。考えておきますよ。

え:そうですか。では、お掃除がんばってください。

プ:あなたこそ、人間としてがんばってください。

え:う、ありがとう。では、また。

 プレさんは、そそくさと地下にお戻りになりました。不思議世界では、必ずしもねこさんが通りがかられるとは決まっていないことを学びました。それにしても、通りがかった生き物に道を尋ねようと思っていたのに、苦手な掃除の話題をふられて、すっかり忘れてしまいました。このままでは、家に帰ることができません。

 途方に暮れていました。時計をして出かけたはずなのに、今いったい何時なのか、わかりません。時計を無くしたかって?いえ、時計は先ほどからずっと左腕にあるのですが、なぜか、動いていません。電池が切れてしまったのでしょうか。

 あ、あれは、切り株では?この切り株は、先日、とあるねこさん(ここ)が座っておられたものと似ています。あのときは、何をなさっていたのか、尋ねても教えてもらえませんでしたが。今日は、ここにはおられないのでしょうか。と思ったら、ねこさんがおられました。おかしいな、さっきは誰もいない切り株だったのに。ねこさんは、こないだと寸分違わない様子です。

え:こんにちは。お久しぶりです。

ね:ん?

え:ほら、先日お会いした

ね:そうだった?

え:はい、何をしておられるのか、伺いました。教えてくださいませんでしたが。

ね:あ、そういうこともあったね。

え:はい、あのあとも、しばらく考えてみたのですが、やはり、わからないままになっていたので、今日お会いできてよかったです。

ね:そう。

え:それで、今日は何をなさっているのですか?

ね:こないだと同じ。

え:そうですか。では、こないだは、何をなさっていたのですか?

ね:いつもと同じ。

え:う、……いつもは、何をなさっているのですか?

ね:だいたい

え:だいたい?

ね:この切り株に座って

え:座って?

ね:目を閉じて

え:うんうん

ね:居る

え:居る?

ね:そう。

え:???

ね:……

え:この切り株に座って、目を閉じて、居ると?だいたい、いつも?

ね:そう。

え:それは、何のためですか?

ね:何のためでも、ない。

え:???

ね:……

え:何のためでもないことをするため、ですか?

ね:違う。

え:う~ん、わかりません。

ね:何かのためでも、何でもないためでも、ない。

え:…もしかすると、「○○のため」という発想がダメなのでしょうか?

ね:そう。

え:ああ、そうか~。

ね:無

え:む?

ね:無

え:ああ、無、ですか。

ね:そう。

え:そうすると、ねこさんは、毎日、だいたい、ここに来て、切り株の上で、「無」なのですね?

ね:そう。

え:なるほど。わかったような、わからないような。

ね:わかったり、わからなかったり、じゃない。

え:???…あ、これも、さっきと同じでしょうか?

ね:…

え:わかったり、わからなかったり、じゃないんだ。わかる、わからない、じゃなくて、う~ん

ね:存在を確認するためには

え:うんうん

ね:存在を確認しては、ダメだ。

え:なぜです?

ね:それは、言えない。

え:わかりません。あ、わかりません、はいけないのか。

ね:そう。

え:無、です。

ね:そう。

え:そうか。

ね:そう。

え:ねこさん、すみませんでした。

ね:?

え:私には、ねこさんに問いかけるだけの、無がありません。

ね:無我?

え:無、が、です。

ね:そうか。

え:はい

ね:じゃあ、そのときになったら、また。

え:はい、そんなことには、ならないような気もしますが。では、失礼します。

ね:……

 いやあ、また、大変な問答になりかけました。意味不明ですよ。「わからない」も言ってはいけないなんて。でも、今日は前回よりは少しお話ができましたよ。内容が理解できなかったけど。わかった感が少しもない会話って、新鮮!と言いたいけど、わかった感ってなかなか持てないものです。それにしても、わからなすぎ感の豊富なねこさんでした。

 もう少し会話になるような生き物と遭遇したいなぁ。赤さんは?赤さんが出てきてくれないかしら?あ、でも、年末年始はご家族で帰省するって言っていたなぁ。じゃあ、無理か。

 しばらく歩いていくと、道路の脇に蓋がありました。側溝の上に置いてある、あの蓋です。だから、金属製で格子状になっています。格子から覗くと、溝がありませんよ。その代わり、向こうに世界がありました。森です。森を上から眺めているみたいです。でも、ここは道路の側溝でしょうに。なにゆえ?

 蓋に乗ってなおもよく様子を見ようとしたところ、乗っていた蓋ごと下に落っこちてしまいました。ここの辺りの階層構造がよくわかりませんが、落ちたものは落ちたものとして対応するしかないでしょう。

 さっきまでの不思議世界とは違ったところに、森ができていました。なぜ?それは、私が知りたいです。
 樹齢50年ほどの広葉樹の隣にもふもふの落ち葉が積み重なっている、そこに落ちました。タイミングと場所の都合がよすぎですが、ここで、落下によるショックでフェイタルな外傷を負ってしまっては、話として深刻すぎるからでしょうか。まぁ、一種のご都合主義ですね。お陰で、怪我もなくてすみました。

 広葉樹にはウロがあります。どなたか住んでおられるのかもしれません。あ。

え:あのう、すみませんが

むささび:何ですか?

え:むささびさんですよね?

む:そうですが、それが何か?

え:いえ、よかった。あの、ちょっと道に迷ったんですけども、道を伺っても?

む:いいですけど

え:不思議世界の出口はどちらでしょうか?

む:あっちだよ。

え:そうですか。どうやって、行けばいいでしょうか?

む:この木の天辺から、隣のアカマツの枝に飛び移って、それから、さらに、隣のケヤキの天辺からその隣のブナに飛び移って

え:あの、すいません、むささびさん

む:ん?

え:せっかくなのですが、私はあなたのような皮膜を持っていないので、そういう道順では、教えていただいても、そのとおりにすることができないのですが

む:あ、そうか

え:はい、滑降は、してみたいのですけども。なにぶん、皮がね、ないですし。

む:そうか。皮もないとは、不便なこと。

え:はい、ただ、皮があったことがないので、さほど、不便を感じたことはありませんでした。これまでは。

む:今、感じているでしょう?

え:はい。いまだかつて、ここまで、皮がない不便を感じたことはありません。

む:お気の毒に。

え:ありがとうございます。しかし、所与のものですから、ない皮をねだっても仕方ないですし。

む:まぁ、そうだね。僕も自分のしかないし、あげるわけにもいかないしね。

え:はい、お気遣いありがとうございます。お気持ちだけで。

む:うん。そうすると、僕に道順を聞いてもダメだろうな。逆に、僕は皮のない道順は教えられないや。

え:そうですね。わかりました。でも、困ったな。人間として、早めに帰宅して、掃除をしなくてはならないのですが。

む:ああ、よくわかるよ。じゃあ、別の生き物を呼んでくるから、ちょっとそこで待っていてよ。

え:そうですか、それは助かります。じゃあ、ここに居ますね。

む:うん、待っててね~。

 むささびさんが皮飛行でどこかに行ってしまわれました。出かけてから相当時間が経っているのではないかと思うのですが、時計も止まったままだし、外も明るいままです。今、何時なんだろう?さっき、むささびさんに聞けばよかった。わからないかもしれないけど。

 待ちくたびれてうとうとしていたみたいです。

え:あ、あなたは、むささびさんが呼んできてくれた方ですか?

生き物:そうだよ。

ここにつづく)

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