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田舎の風景

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    2008年9月8日~11日までの、田舎での時間。

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2008年12月 9日 (火)

赤さん、ふたたび。

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えふ:赤さん!赤さんではないですか?お久しぶりです。(赤さんについてはここ

赤さん:あ、えふしゃん。ご無沙汰してます。お元気でちゅか?

え:ありがとう、お陰さまで。赤さんこそ、お元気そうでなによりです。ちょっと見ない間に大きくなりましたね。

赤:なんか、親戚のおばさんみたいでちゅ。

え:…ところで、赤さんは、こんなところで何をしているのですか?

赤:はい、あたちに妹か弟ができるのでちゅ。

え:えっ?それは、よかったですね。おめでとうございます。

赤:ありがとうでちゅ。それで、お母さんのために、マタニティーマークをもらいにきまちた。…でも…

え:赤さん、何か浮かない顔ですね。嬉しくないんですか?

赤:妹か弟ができるのは嬉ちいですが、あたちのお母さんのことが心配なのでちゅ。

え:お母さんは、あまり順調ではないのですか?

赤:いえいえ、お陰さまで、元気にちております。まだ、初期ですので、ときどき気持ちが悪くなったりはするみたいでちゅが、ご飯も食べていますよ。

え:それでは、何が問題なのですか?

赤:それは、産科医療の崩壊でちゅよ。

え:ああっ!!

赤:あたちのお母さんが、もし、分娩途中に異変があった場合に、きちんと対応できる緊急態勢があるのかどうか、とっても心配なのです。

え:そう言えば、こないだも、不幸な事故があったばっかりですものね。

赤:そうなのでちゅ。あれで、緊急システムが機能していないことが露呈したのでちた。

え:国が悪いのか、東京都に問題があるのか、醜い争い場面をニュースで見ました。

赤:どっちにも問題があるのでちゅ。大人のくちぇに、人のせいにちてばかりで、見苦ちかったでちゅね。

え:はい、おっしゃるとおりです。

赤:お母さんが妹か弟を産むまでに、もう半年くらいしかないのでちゅ。なんとか、体制を整えてもらわないと、おちおち安心ちて眠ったりできないでちゅよ。

え:そうですねぇ。赤さん、眠らないと大きくなれませんよ。

赤:!! 本当でしゅか?

え:はい、寝ている間に、大きくなるために必要な成長ホルモンが分泌されると言われています。

赤:この大きさで成長が止まったら困りましゅ。小さくてなかなか不便ですよ、このからだ。

え:じゃあ、よく眠ってください。

赤:だけど、産科医療崩壊問題が。

え:そもそも、産科医療の崩壊は最近始まったことではないのですよね。

赤:そうなのでちゅか?

え:そうなんです。最近になって綻びをカバーしきれなくなって、崩壊していることが明らかになったというだけなんです。

赤:じゃあ、いつ頃から現場レベルでは問題になっていたのですか?

え:私もよく知らないのですが、少なく見積もっても、もう10年くらいは経っていると思いますよ。

赤:じゃあ、この10年もの間、大人の人たちは何をしていたのでちゅか?

え:10年前はあたちも赤ちゃんだったので、わかりまちぇん。

赤:嘘おっしゃい!

え:すいません。10年くらいは、やる気と体力のある方々が個人的に無理を重ねてなんとかがんばっておられたのです。と思います。

赤:でも、そんなのは、体力の限界が来た時点で総崩れですよ。

え:そうなんです。女性医師も増えてきているのですが、女性たちが家庭を持ち子どもを設けるととてもそれまでの男性並み無理無理勤務にはついていけません。そこで、女性医師たちは働き続けることができなかったということが1つ指摘されています。

赤:産科は女性医師が多かったのですか?

え:近年は産科医になる女性も多いと言われています。ただ、産科医になって子どもを育てながら働こうとしても、男性のキャリアの長い医師から、男性並みに働けないことに対して嫌味を言われたり嫌がらせを受けたりして、つらい思いをした女性医師もいたようです。

赤:赤ちゃんは邪魔なのですか?

え:邪魔ではないのですが、赤ちゃんの世話をするのがお母さんである女性医師になりがちである現状では、世話をするための時間を確保しながら働ける環境がなければ、働き続けることができないのです。そういった子育てしながら働けるような職場環境整備を進める方向へ改革するのではなく、個人個人が限界までがんばる方向にやってしまっていたために、現在の状況を招いてしまった、ようです。

赤:これって、医療現場におけるワーク・ライフ・バランスの問題ではないでちゅか?

え:さすが、赤さん。おっしゃるとおりだと思います。

赤:ありがとう。

え:さらに、数年前に起こった不幸な出産事故のことが、病院において、それまでも無理して何とか続けていた産科から撤退する契機になったとも言われています。

赤:それは、何ですか?

え:福島県の産科で起こった妊婦の死亡事故なんですけど。赤ちゃんは生きて産まれましたが、お母さんである女性のほうは亡くなってしまったのです。

赤:お気の毒に。

え:そのときに担当した産科の男性医師が逮捕されたんです。これは、日本では初めての、極めてインパクトのある出来事でした。

赤:なぜ、お医者さんが刑事責任を問われるのですか?

え:つまり、亡くなってしまった女性に対して、本当は助けられたのではないかと。

赤:お医者さんが殺したと疑われたということですか?

え:業務上過失致死と医師法違反などが疑われたのでした。この事件は、裁判で争われました。この夏に、結審したのですけども、判決は医師には責任を問えないというものでした。

赤:そうでちゅか。それは、よかったのでちゅか?

え:いろいろ難しいところがあります。まず1つは、刑事告訴を恐れた全国の病院がいったん取りやめた産科を再開することがなかなか難しいということです。それでなくても、産科は激務なんですよ。

赤:時間通りにはいかないですもんね。

え:そう、それと、最近では検診を定期的に受けないで、まさに産む直前に駆け込む人もいるようです。

赤:飛び込み出産ですか?

え:はい、そういう方もいるようです。ただ、そういった女性の心がけや無知を指摘する論調がありますが、検査費用が高く払えない人たちも一定数いることに対する想像力がないのではないか、という気がします。

赤:検診を受けるのは高いのですか?

え:出産にかかわることに関しては、病気ではないため、健康保険が使えないということです。

赤:自費ではとっても高いでしょう?

え:はい、自治体によって違いがあるのですが、最近は検診14回全てを無料にするという自治体もあるにはあります。でも、5回まで無料とか少ないところはまだまだあります。自治体によって差が結構大きいのです。

赤:他にも、かかる費用はありますか?

え:分娩費用ですかねぇ。地域にもよるみたいですけど、50万くらいが相場だとか。もっと高いところもあるみたいです。これは、保険が使えません。出産一時金は子ども1人当たり35万円です。カバーしきれない場合もあるのですね。

赤:払えない人もいるのではないですか?

え:そうですね。払えない人も当然いると思います。

赤:そういう人は、病院に行かずに産むのですか?

え:あとは、借金でもするんでしょうかねぇ。出産費用を増額したり、検診費用を全額無料にするという話もあるようですが、さっさと決めて実現してしまうことが大切ですね。ぼんやりしているうちに、産む日になりますしね。

赤:そうでちゅね。赤ちゃんは待ってはくれないのでちゅ。

え:病院にとっては、支払いをしない患者として認識されている場合もあると思います。

赤:ああ、踏み倒すのですか?

え:故意にしようとしているかどうかはわかりませんが、払えない場合、払わないこともあるのでしょうねぇ。そのためか、最近は費用の大半を前払いでもとめてくるところもあるとか。

赤:少子化は問題だとされているのではないですか?

え:はい、国レベルでも地域レベルでもあらゆる面で現在のシステムの根幹を揺るがす大きな問題だと認識されていると思いますよ。

赤:では、なぜ、出産費用を無料にすることくらい、これまでさっさと実行していなかったのですか?

え:そうですよね。なんでだろう?

赤:子どもを産むことが誰でもできる簡単なことだと、政治家の人は思っているのですか?

え:ああ、そうかもしれませんね。全員ではないとは思いますけど。

赤:つい先日も、子どもを産んだことのない人が少子化相になったら「子どもの産み方を知っているのか」と聞かれるとか言った、しょうもない人がいましたね。

え:はい、「ご発言」の趣旨はそんな感じでした。

赤:あの人は、自分には5人の息子がいるそうでちゅけど、それは、自分が産んだのですか?

え:たぶん、自分では産んでおられないと思います。

赤:だったら、産み方はちらないのでは?

え:そうですが。たぶん、自分は男性なので、産めなくても当然だと開き直っておられるのではないかと思います。

赤:自分のほうが少子化相にふさわちいとかって、とってもずうずうしいことも言ったというのは、本当ですか?

え:そういう報道を私も目にしましたよ。

赤:少子化相になりたかったけど、なれなかったから、ひがんでおられるんでちゅかね?

え:…もし、彼が少子化相になっていたら、極めてユニークな施策を発表しそうですね。

赤:どんなものですか?

え:そうだなぁ、たとえば、子どもを産まないと罰金が科せられるとか。

赤:それだと、彼が真っ先に罰金を払うことになりまちぇんか?

え:ああ、きっと女性限定ですよ。

赤:でも、女性だけでは子どもは産まれないと、性教育でならいまちたよ。

え:そうですね。性教育をきちんと受けずにいたために、あんなことになったのかもしれないです。

赤:性教育を受けてもいないのに、少子化相にふさわちいなんて、言ったんでちゅか?

え:はい、言ったもの勝ち、なところがあります。変な「ご発言」でも、辞任につながることはほとんどないんですよ。この国の場合。

赤:おかちなことばかり言う人は、政治家には向いていないのではないでちゅか?

え:それで、選別すると、半分くらいになってしまうかもしれませんね。

赤:!!

え:皮肉な言い方をすれば、「性差別発言のひとつもできずに一人前の政治家とは言えない」といったような状況があります。残念なことですが。「ご発言」が場合によっては人気取りにつながることもあるようです。

赤:そんな人たちに、あたちやこれから産まれる妹か弟の将来を決めたりちてほちくありまちぇん。

え:そうですね。もっと、きちんとした政治家が増えないと、将来に明るい希望が持てないかもしれません。

赤:あたちは政治家になろうかな。

え:それもいいかもしれませんね。女性の政治家は割合自体がまだとっても少ないのですよ、日本の場合。

赤:どうちてなのでしょう?

え:女性で活躍する政治家のロールモデルが少ないことでしょうか。あとは、女性に政治は向かないという決めつけ。男性同士の絆に食い込もうとすると排除しようとする性質などなどでしょうか。政党が女性候補者を増やそうとする本気度が感じられないこともありますかね。何より、政治家の暮らしにWLBが感じられないことかもしれません。多くの女性はそんな生活に憧れないような気がします。

赤:小渕少子化相は、女性で若くてなかなかがんばっておられると思うのでちゅけど。

え:そうですね。それなのに、同じ政党のなかで、キャリアも長く、本当ならば、バックアップなりサポートなりをする立場になる人が、あんな「ご発言」をなさいました。

赤:女性が若くして政治家になるのもむずかしいけど、もしなれたとしても、あんな目に遭うんじゃ割にあわないでちゅね。

え:そうです。たぶん、そんなことが事前に十分すぎるほど予測できてしまうので、女性が政治分野に参画していこうとするのが、遅れているのかもしれません。誰だって、自分が尊重されるところにいたいですから。

赤:あたちに被選挙権ができるまでには、まだ20年以上もありまちゅ。その間に、少しでもよくなる可能性はありまちぇんか?

え:そうですね。赤さんが25歳になるのは、2030年ですね。

赤:はい、まだ大分時間がありそうです。

え:とはいえ、20年を振り返ると、ほとんど変わっていないことも結構あるので、なんとも言いにくいですね。

赤:何が変わっていないのでちゅか?

え:たとえば、女性の働き方。同時に男性の働き方も。出産を機に仕事をやめる人の割合が20年前からほとんど変わっていないということが明らかになっているのです。

赤:育児休業制度は使えないのですか?

え:これを使う人は女性で90%を超えたのですが、それは辞めなかった人における割合で3割ほど。使わずに辞めてしまう人が全体の7割以上いるということなんです。

赤:意味ないでちゅ!

え:それから、非正規労働の人は、そもそも育児休業制度などが使えない場合もあります。

赤:正規じゃなければ、子どもはあきらめろってことですか?

え:子どもか仕事か選べ、ってことでしょうか。これは、20年前とほとんど変わっていないと思います。ただ、女性が仕事を辞めても、男性の収入のみで生活できない人たちも増えているので、「子どもを選んだ。仕事は辞めた。路頭に迷った」というケースもこれから出てくるような気がしますね。

赤:でも、これまでの20年はそうだったかもちれませんが、この先の20年はもっとよく変わる可能性があるのではないでしゅか?

え:そうなるように、どうすればよいのか、考えている人はたくさんいると思いますよ。

赤:あたちも、力不足でちゅが、考えて行動ちまちゅから。

え:そうですね。まぁ、でも、まずは、からだが大きくなるように、よく眠ってください。

赤:はい、今夜からしっかりと眠ります。

え:今日はお会いできてよかったです。また。

【追記2008.12.15】

 妊婦の検診は最低の場合5回でした。修正しました。

 厚生労働省のサイトにある社会保障審議会第19回少子化対策特別部会資料(ここ)を見ていたら、「妊婦検診費用の公費助成5回分」とあります(ここ)(3頁、サムネイル4頁)。妊娠全期間にわたって14回が理想とされているので、残りの9回分をどうするかが問題になっているということです。自治体によっては14回全部を助成しているところもあるようですが、これは、地方財政措置されていないので、その自治体が負担しているということなのでしょうね(市町村の任意助成)。裕福な自治体はできますが、多くの余裕のない自治体ではむずかしいのでしょう。したがって、9回分を国庫と市町村から2分の1ずつ負担しようとの「拡充案」があるようです。

 父親(男性)の育児休業取得について(6頁、サムネイル7頁)は、専業主婦の場合に、現在は多くの(7割くらいらしい)企業では労使協定で取得できなくともよいとしているらしいのですが、専業主婦(夫)でも働いている方が取得できるようにするほうが望ましいでしょう。子どもの祖父母にあたる人たちと同居していないことの多い現在では、母(父)だけが専業で家に居ても、一人で子どもの面倒を見られると考えていること自体が間違い。発狂してしまうでしょう、私なら。

 「次世代育成支援に関する給付・サービス(児童・家族関係社会支出)の財源構成(推計)の国際比較(対GDP比)」ここ(7頁、サムネイル8頁)も興味深いです。スウェーデン、フランス、ドイツ、日本を比較しているのですが、いかに日本が少ないかということがよくわかります。以前から指摘されていることではありますが。それと、私が知らなかっただけではありますが、「事業主負担」「被保険者負担」「その他(税財源など)」の負担割合のグラフが興味深いです。スウェーデンとフランスは事業主負担が結構あるのに、ドイツは全くない。この違いは何なんでしょう。ドイツでは100%「その他(税財源など)」になっているようです。そして、日本だけが「被保険者負担」がある。背景となる知識が不足しているため、それ以上のことはよくわからないのですが。でも、おもしろいと思いました。

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コメント

えふさん
  これも多くの人に読んで欲しい記事になりました。以前正論はインパーソナルでつまらなくなるという話をしましたが。正論でパーソナルでかつ個性的な表現を実現しましたね。これは拍手です。内容は仕事にも関連するので、肝に銘じます。

山口一男さん

 ありがとうございます。

 「正論でパーソナルでかつ個性的な表現を実現」なんて…そんなにお褒めいただけるとは、照れますね(笑)。

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