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2009年1月 3日 (土)

フィンランドが男女平等政策に成功した理由を考えてみた。

ジェンダー主流化と雇用戦略―ヨーロッパ諸国の事例

『ジェンダー主流化と雇用戦略―ヨーロッパ諸国の事例』(ユテ ベーニング (編集), 高木 郁朗 (編集), アンパロ・セラーノ パスキュアル (編集), 麻生 裕子 (編集), Ute Behning (原著), Amparo Serrano Pascual (原著) 、原著2001年、邦訳2003年刊)

 本書は、Gender Mainstreaming in the European Employment Strategyの邦訳です。サブタイトルに「ヨーロッパ諸国」とあるように、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、オランダ、ドイツ、オーストリア、ルクセンブルク、フランス、イギリス、スペイン、イタリア、イギリスの12ヶ国のケースについて書かれています。

 ここでは、全体ではなく、最近気になっているフィンランドについて書いておきましょう。

 なぜフィンランドが気になるかですけども、まぁ、昔から気になると言えば気になるし、最近では、いくつかの書籍を読んだところ、大変な不況を乗り切って現在の状態になったらしいとわかったからでしょうか。つまり、気になるポイントは、どのようにして、その不況を乗り切ったのかということであり、かつ、なぜ男女平等をかなりの程度実現しているか、という点にあるわけです。

 フィンランドの女性がとくに高い比率で有給労働に参加してきた理由としては、さまざまな要素のなかで、フィンランド文化と経済の要素があげられる。たとえば、フィンランドの歴史的に遅れ、かつ急速な工業化と農業型共働きモデルから産業社会型・脱産業社会型の労働モデルへの転換、あるいは男性の「パン稼ぎ」型モデルが実際にはフィンランドでは根をおろさなかったという事実などがそれである。他の重要な要素としては、女性が男性と同レベルの教育を受けてきたことである。今日では、フィンランドの労働生活に参加している女性は男性の同僚よりも高度な教育を受けている。(75頁)

 1997年に発表されている論文によれば、フィンランドの女性労働においては、「時間のプレッシャー」が増大しているとのことでした。「自分の仕事をこなすのに十分な時間があるか」とか「時間のプレッシャーのもとでしなければならない仕事が何時間ぐらいあるか」といった質問から考えると、仕事量が多いのに使える時間はあまりない、ということだったのでしょうか。まぁ、もう10年以上前になるので、現在の状況はどうだかよくわかりませんけども。この時点では、「労働生活の質」調査から得られるもっとも明確な変化として出現してきた特徴だったそうです。

 「巻き返しを防止する」との項では、2つの「巻き返し」について触れられています。文脈から、「巻き返し」とはおそらく、反動というか逆流みたいなことかと思います。1つは、職業技能をどのように定義し、評価するかということ。女性が高い教育を受けている現状でも、「教育の価値が低く評価されること」もあり、どのようにして、「女性の労働の質と量を測定するかをめぐって熾烈なたたかい」が必要だそうです。もう1つは、福祉国家が疑問視されていること。とくに、「保健・医療分野においては、要員の削減に悩み、従業員は疲労困憊するようになっている」事態は、効率を増進するようで、「結局は効率を低下させてしまう」のだと。フィンランドでも、ケア専門職は女性が多い職域のようですから、「十分な資源さえ確保されれば、女性の地位が改善されることは明らか」だと言っています。
 これら2点は、現在の日本の状況と非常に似ているのではないでしょうか。介護職・看護職が足りないこと、それは、労働条件や待遇の悪さが大きな要因となっていること。そして、「ケア」が極端な言い方をすれば、誰でもできることだと見なされているところ。女性に偏りがちなこと。それが待遇改善を遅らせてしまっていることなど。

 最終節「ジェンダー主流化」では、「背景」「ジェンダー主流化の方策」「男女間格差ととりくむ」「仕事と家族生活の両立」「仕事への復帰を容易にする」「ジェンダー主流化の影響の評価」について書かれています。

 「背景」で興味深いところを抜粋しておきます。

 フィンランドの福祉国家モデルは、女性にたいして職を提供し、両親が揃って仕事のために家庭の外に出ることを認めている。合理的な価格での保育、高齢者にたいする介護、それに学校給食制度はすべて、両親が仕事のために一日外出することができることを意味する。法律は、学齢に達しないすべての子どもにたいして社会が補助をおこない、合理的な価格で提供される保育所を保障している。3歳未満の場合には、オプションとして国が助成する家庭内保育もある。義務教育から後期中等教育期にあたる生徒・児童にたいしては学校での昼食が提供される。高齢者への介護は社会のバックアップのもとに組織され、仕事のために外へ出ることを可能としている。女性たちは仕事に熱情をもっており、勉学と職業資格の取得に励んできた。女性たちがこのようにできたのは、保育と高齢者の介護が何十年にもわたってしだいに改善されてきいたためである。(84頁)

 「ジェンダー主流化の方策」では、ジェンダー統計の重要性について書いてあるのですが、1998年に初めて生みだされたという「平等バロメーター」のことが気になります。あまり詳しく書いてはないのですが、おそらく、ジェンダー統計をきちんと取ることだけでなく、「男女間の平等指標を発展させ、教育、訓練と職業生活、稼得所得の男女間の内訳の説明、各種のサービス、社会参加、意思決定、健康状態、犯罪についての内訳の説明と利用可能性、年少の子どもと家族が働く女性に及ぼす影響、家族休暇の男性の利用の影響を示すようにしている。」

 「仕事と家族生活の両立」でも、以下の点が、日本の状況と似ているように思いました。

 法律は男女双方にたいして親休暇とケア休暇を取得する平等の機会を与えており、また育児の観点から短時間の労働をおこなう機会を認めている。実際には休暇の権利は主として母親によって利用されており、その結果、職場を離れる場合の給付の負担は大きな比率で女性が支配的な分野の経営者が負っており、その結果、労働市場における女性の地位を引き下げることにもなっている。(86頁)

 以下の一文は、おもしろいですね。日本の場合は、親族のアンペイドワークが得られる場合は女性は仕事をし続けられるが、得られない場合は、辞めざるを得ないような気がします。保育所に入れず、かつ、親族のアンペイドワークが得られなかったために、辞めることになった人はかなり多いのではないかという気がします。データを確認したわけではなく、印象ですけども。

 フィンランドの労働市場参加率は高く、大半の人びとはフルタイムで働いているから、親族のアンペイドワークでこの需要に答える潜在能力はほとんどない。(87頁)

 以上、なかなか興味深いものでした。最後の辺りで、ジェンダー統計の必要性や重要性が強調されているのですが、著者の肩書を見たら、フィンランド統計局労働研究部長でした。学術博士でもあるようです。こういう人がこういう職に就くことは重要ですね。でも、より重要なのは、こういう人をこういう職につけようと判断する人の判断なのでしょうけども。

 2008年12月22日付朝日新聞夕刊(ここ)でも、フィンランドの「底力」について、書かれています。

 歌田明弘の『地球村の事件簿』に「高福祉こそが経済競争力を生む――北欧社会の「逆転の発想」」(2008.8.22)(ここ)というのを見つけました。タイトルどおりの内容なのですが、ここで紹介されているレポートに大変興味を持ちました。「悪循環に陥っている日本を救う北欧モデル」(2008.8.29)(ここ)でも「北欧モデル」について触れられています。

 歌田さんがお書きになっているような失業のイメージを私も抱いていました。つまり、いったん失業してしまうと、それから脱するのは大変時間のかかることなのではないか、と。日本では実際に失業してから次の職に就くまでの時間が長いのですね。「北欧モデル」の国(フィンランド、スウェーデン、デンマーク)では、失業しても比較的容易に次の仕事を見つけられるようです。その辺りの事情の違いが、失業に対する恐れや忌避感の違いにつながっているのような気がします。

 「北欧モデル」について書かれた報告書は、『The Nordic ModelーEmbracing globalization and sharing risks』(フィンランド経済研究所のレポート『北欧モデル――グローバリズムを受け入れ、リスクを共有する』)と題されたものです。2007年12月4日付ヘルシンキが発行地で、PDFで全文公開(ここ)されています。英文ですが。

Nordic_model_3

The Nordic group is in our case limited to Finland,
Denmark and Sweden, as Norway and Iceland would deserve special treatment due to their non-membership of the EU and their high reliance on oil and fishing respectively.

 これがこのレポートが「北欧モデル」とする国についての説明です。結局、さして地下資源および水産資源に恵まれない国での方法論として、日本が学べるところが非常に大きいのではないか、と思います。

 そうは言いつつも、報告書は167頁もあるので、ちょっと全体をざっと見るのは私にはむずかしいのですが(日本語なら見れるけど)。

 何か感想でも書こうかと思いましたが、時間切れにて、こんな報告書があるよ、と紹介するだけに留めます。

 本日の結論としましては、「タイトルに対応するような答えは見つからず」ですね。悪しからずご了承ください。 

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コメント

えふさん
   新年となって、昨年末からのゆったりとした「想像」のお話が、2日のこれもゆったりとした散歩の話に続き、今年は想像力の膨らむゆったりとしたスタートだなと思っていたら、もう早々と情報の多い北欧記事でびっくりしました。でもこれは参考になります。

   ご紹介のあったThe Nordic Modelですが、一寸内容を見ると今まで、高度な質の福祉の提供、自由貿易経済による経済的豊かさの達成、男女平等の達成の3点で、すべてうまく行ってきた北欧モデルが、現在少子高齢化と経済のグローバルな競争の激化で維持難しくなっているという認識の下にこの対策として「高度成長政策」「更なる高税化政策」「出生力向上政策」「移民労働力の増大政策」のそれぞれがすべて難点があって、うまく行かないだろうとまず議論しています。もちろん既に高税でかつ公務員比率の大きい北欧の現状の下でと言う条件付ですが。それでより有効な対策として「民営化」を上げています。ただしこれもかなり高度にす進んだ北欧の公共部門でも存在する非能率な部分は民営化せよ、と言うことで福祉国家を後退させよということでは有りません。少子高齢化とグローバライぜーションという内圧・外圧はわが国と同じですが、現状の制度が全く違うため、わが国から見て北欧に学ぶことはこれからの北欧の民営化ではなく、むしろ彼らの過去の成功部分(高質の福祉、男女平等、経済成長の同時達成)の制度構築ををどう非能率を生み出さずにわが国に取り込むことが可能かということになるかと思います。

   

山口一男さん

 ありがとうございます。

 そうですねぇ、実はこれは昨年のうちに考えていたのですが、時間がとれず年越しをしてしまったものでした。それで、少し新しい情報も足してみました。

 The Nordic Modelの要約的なご紹介ありがとうございます。北欧モデルの見直しの動きに関しては、別のところでも読んだような気がします。これまでうまく行っていたけれども、さまざまな状況の変化にさらに対応すべき変革が必要だと認識されているのですね。

 日本の現状に対するヒントとして取り込むとすれば、ご指摘のように、福祉国家としての少し前までの状態を、日本の状況に合う形で「改良輸入」することだと私も思います。

 「北欧モデル」の国が考える「民営化」と、日本のような国での「民営化」は全く異なる位相のもののような気がします。

 継続課題なのですが、フィンランドが農業から工業化する時点で男性の「パン稼ぎ」型モデルが根を下ろさなかったのはなぜなのか、気になります。本書には触れられていなかったので、別のものを探してみることにします。

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