2025年1月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
無料ブログはココログ

Chabo!応援してます。


散歩の収穫。

  • こういう色もよいですね。
    散歩をしていて見つけた風景や動植物を記録しておくアルバム。不定期だけど、できるだけ更新を目指す。コメント歓迎。

田舎の風景

  • 東京に戻ります。
    2008年9月8日~11日までの、田舎での時間。

« プリンセスにならなくてはいけないの? | トップページ | ワモンアザラシの子どもが保護されたそうです。 »

2009年1月20日 (火)

あの人の犬になりたい、ですか?

 「あなたの犬になりたい」と言われたら、どうしますか?私は…どうしよう。「せっかくですが、結構です」とかでしょうか。せっかくのお申し出なのに、失礼ですかね?「犬でないと、ダメですか?」と聞いてみる余地はあるかもしれませんね。別の動物だったら…どうしよう。たとえば、「あなたのねこになりたい」とか「あなたのプレーリードッグになりたい」とか。「あなたの金魚になりたい」とか「あなたのコオロギになりたい」とかだったら?

犬身

『犬身』(松浦 理英子著、2007年刊)

 本書は、「あの人の犬になりたい」と願った人間の女性が犬になって、その「あの人」にかわいがられるという話なのでした。性別の違和を無くすために、身体のほうを外科的・内分泌的に変化させることで緩和させようとする方々、つまり、性同一性障害と呼ばれる状態にたとえて、自分は内面は犬なのに外観は人間である違和を種同一性障害だというこの女性。最初は人間の姿だった女性が姿も犬になっていくちょっと変った設定のストーリーなのです。が、犬になりたい気持ちが自然で、私には「そうか、犬になりたいんだね」と自然な感じに思えたのでした。私は今までのところ、自分が犬になりたいとは思ったことがないのですが。でも、そういう人もいるかもしれないし、可能なら、なってもいいんじゃないか、と思うんです。

 本書の書評は刊行されてまもなくいくつか読んでいたので、人間が犬になるストーリーだということはわかっていました。それで、かなり初期に犬になって、そこから始まるのかとなんとなく思っていたのですが、実際には違っていました。単行本で505頁もある分厚い作品なのですけども、そのうちの130頁くらいは犬のフサになる前、つまり、人間の房恵としての生活が描写されているのでした。4分の1くらいなので、結構な割合に思えます。ここで、房恵がどのくらい犬が好きで、さらに、好きなだけでなく犬になってしまいたいと思う心情が丁寧に描かれているので、読者もだんだん「犬になりたいのも無理はない」と説得されていくのでした。少なくとも、私には、この人は犬になるのが自然である、と思えました。

 犬になった辺りから、本格的にストーリーが展開されるとも言えるかもしれません。フサがもらわれていった先の人間の女性である玉石梓について、これまで知らなかったことが明らかになってくるばかりでなく、それがこれ以降の展開に大きな意味をもつものだからです。

 房恵が犬になる契約を交わしたとき、その契約には、房恵が犬のフサとして梓と幸せな犬生を送ることができると約束されていたはずでした。大好きな人間の梓と一緒にいられるだけで幸せである、あるいは、人間であったなら実現しないようなつながりを持つことができたのは犬になったからである、と言えるかもしれませんが、フサは犬になったばかりに、それも、人間の知性をもったままの「化け犬」になったために、知らなくてもよかったり目撃しなくてもよいことまで知ることになります。それを幸せと見なすのか、見なさないのか。それは、読者の幸福観にかかわることかと思います。

 他の人はどうだか知りませんが、本書を読みながら、私は犬として人間を心配したりするような経験を疑似的にしたような気がします。これは、人間として心配するよりも、大変な側面があります。人間なら、具体的になんとかすることもできるかもしれないのに、犬の身では近くに居て案じることしかできないからです。あ、観るだけで和ませたりすることはできるかもしれませんけども。本当の犬ならいいけど、人間の知性を持ちつつ犬になってしまうと、心配できるのにできることは何もない、という苦境に立たされます。

 著者が意図したドッグセクシュアル(好きな人間に犬を可愛がるように可愛がってもらえば、天国にいるような心地になるっていうセクシュアリティ)(82頁)を考えるために、別のセクシュアリティにかかわる問題もかなり正面から取り上げており、重いテーマでした。が、そういう重いことも含めて非常に興味深かったです。

 全体を通して、犬のかわいらしさに関する表現がとてもよかったです。犬、いいです。ただ、常に一緒に居てくれていつも心配そうに眺めてくれる生き物は、ありがたいけど、私だったらちょっとプレッシャーです。だって、心配かけないように努力するにも限界がありますからね。

 「あなたの犬になりたい」と言われたら…という問いに戻って

 本書を読了しても、やはり、私は自分が犬になりたいとは思いませんけども、でも、「犬になって好きな人に犬としてかわいがられたい」という気持ちはかなりの程度理解できたように思いました。たとえば、誰かが私にそういう相談をしてきたら、「それもいいね」と言えるような気がします。

 犬プロポーズへの返答は…「私の犬にならなくていいので、ときどき、犬として遊んでください」かな。でも、「犬だけじゃなくて、ときどきはねこにもなってねことして遊んだり、プレーリーとして遊んだりもしてくださるともっといいです。」ですかね。私は自分が犬になったりは特にしたくありませんが。でも、この人が人間じゃなかったらいいのに…と思ったことはありますねぇ。変なの。

« プリンセスにならなくてはいけないの? | トップページ | ワモンアザラシの子どもが保護されたそうです。 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

動物」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: あの人の犬になりたい、ですか?:

« プリンセスにならなくてはいけないの? | トップページ | ワモンアザラシの子どもが保護されたそうです。 »