CHILD POVERTY 2007
大人の貧困だけでなく、子どもの貧困についても、少しずつですが、報道されてきたように感じます。
2009年1月14日日経新聞でも、子どもの貧困について取り上げられていました(ここ)。
Child Poverty Action Groupというサイトがイギリスにあるようです(ここ)。このサイトのInformation & Resourcesのタブ(ここ)にPoverty facts and figuresとあり、2008年10月に出された子どもの貧困に関する統計がPDFで公開されていました(ここ)。
Three points are worth emphasising from this well-used definition. First, that poverty is relative – it is about not having the standard of living that is typical in a given society and at a given time. Secondly, resources are central. This means in a capitalist country like the UK, money is central. Thirdly, the definition highlights not just basic survival, but the ability to participate in society.
The official target to halve child poverty by 2010/11 is now measured against the following three indicators.
1 Children experiencing relative low income (the Government’s headline measure). Defined as children in households with ‘needsadjusted’ 5 incomes below the poverty line (60 per cent of the current national median income).
2 Children experiencing material deprivation and relative low income combined. Defined as children in households with needsadjusted incomes below 70 per cent of the national median and who are experiencing material deprivation.
3 Children experiencing absolute low income. Defined as children in households with needs-adjusted incomes below 60 per cent of the 1998/99 national median income (increased for price inflation).
日本が子どもの貧困についても悲惨な状況にあるということは、ここでも触れたのですけども、その際にも言及されていたOECD加盟国での貧困に関する調査などを見てみました。
なにゆえ、家具屋さんが?と思うのですが、こういうサイトを見つけました(ここ)。
CHILD POVERTY 2007
Child Poverty Report Unicef(ここ)
Dept for Work & Pensions - Households Below Average Income (2007)(ここ)には、
Department for Work and Pensions Working Paper No 20として、
Feasibility study into the effects of low income, material deprivation and parental employment on outcomes for children both in adulthood and as children
という報告書があります(ここ)。
The context for this study is provided by:
(i) The short, medium and long-term government targets first to reduce and ultimately to eliminate child poverty by 2020.
(ii) Policies to increase lone parent employment and to reduce the number of children brought up in workless households.
これは、物質的な窮乏が子どもにとって長期的な影響を与えることを示したものです。
ユニセフが出している報告書(Report Card 7)に『Child poverty in perspective: An overview of child well-being in rich countries---A comprehensive assessment of the lives and well-being of children and adolescents in the economically advanced nations』というのがあります(ここ)。2007年に出されていました。
この報告書は、タイトルにあるように、21の工業国における子どもと若者の生命とウェルビーイングに関して包括的なアセスメントをしたものです。その目的は、子どもたちのlivesを向上させる政策を議論し発展させること。
具体的には、6つの異なる項目と次元のもとで、子どものウェルビーイングを測定し比較することです。それら6つとは、物質的なウェルビーイング、健康と安全、教育、仲間と家族関係、ふるまいとリスク、若い人々自身の主観的なウェルビーイングです。
主要な知見としては、
・オランダが子どものウェルビーイングに関して1位である。6つのすべての次元で10位以内に入っている。
・ヨーロッパの国はこのリーグで上位半分に入っている。北欧は4位までを占めている。
・すべての国は弱点をもっている。子どものウェル・ビーイングに関して6つすべての次元で上位3分の1にランクしている国はない。オランダとスウェーデンは惜しいのだけど。
・イギリスとアメリカは6つの次元のうち5つを下位3分の1に見つけられる。
・すべての、あるいはいくつかのOECD諸国は子どものウェルビーイングに関してそれぞれの次元のランキングが広く分布していることがわかっているので、ウェルビーイングの単独の次元も、子どものウェルビーイングにとって信頼性のある数字として示しているとは言えない。
・子どものウェルビーイングと国民1人当たりのGDPには明らかな関係が見られない。たとえば、チェコでは、フランス、オーストリア、アメリカ、イギリスを含む裕福な国も子どものウェルビーイングのランキングすべてで上位を達成している。
オランダが1位とは知りませんでした。が、そういえば、最近出版された書籍でも『残業ゼロ授業料ゼロで豊かな国オランダ』がありましたね。私は未読なのですけども、興味深いですね。毎週日曜日22時からフジ系で放送している『サキヨミ』(2009.3.8)という番組でもワークシェアリングについてオランダを取材していて、子どもの幸福度が世界一だと言っていました。大人に対する街頭インタビューでも、そこで紹介されていたのは、一様に「時間が一番大切」「時間が大切、人生は一度しかないから」と言っていました。まぁ、編集者の意図もありますから、丸飲みするのは危険ですが、「時間が大切」はそうだろうと思えますし、オランダの人だけでなく、どこに住んでいようとも、そんな風に言えるような環境のほうが暮らしやすいのではないかと思いました。
そんなことで、ちょっと(自分で勝手に設定した)宿題になっていたこの件、ようやくアップできました。
【追記 2009.3.11】
この図は、先日「社会的排除とジェンダー」(このシンポの情報についてはここ)(ここのコメント欄に多少内容について触れていますが)という国際シンポに行った際に大澤報告で配布された資料の一部です。ここでも、日本の税・社会保障制度が逆機能をとっているのだと強調されていました。
図中には、私の雑な走り書きが邪魔ですが、日本のグラフについて、右上がりなのは特異だとおっしゃっていました。日本では、「税を払って現金給付を受けると、貧困率が上がる」というおかしなことになっているということですね。
このグラフのソースは、ここでしょうか。Whiteford, P. and W. Adema (2007)は55頁で、17頁(サムネイル19)からChild poverty trendsがあり、次頁に「Table 2. Trends in child poverty, before and after taxes and transfers, 1980s to around 2000」の表がありますね。
【追記 2009.3.12】
阿部彩さんの「日本における子育て世帯の貧困・相対的剥奪と社会政策」を見ていたら、2005年の状況がグラフに示されていました。
これは『子育てをめぐる社会政策 その機能と逆機能』(社会政策学会編、2008年刊)に収録されているものです。
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えふさん
また貴重な情報をありがとうございます。ショックだったのは最初の情報、阿部彩氏の経済教室の記事の図2です。再分配後の子供の貧困度が各国では下がっているのに、日本ではなんと上がっている。この事実を知らなかったことは、厚生経済が専門ではないとはいて、とても恥ずかしいです。もう少し事実を深く知った上で、この事実はぜひとも伝えていかねばと思います。再分配というのは、自由主義的人間には、僕も含めて、盲点となりやすい分野なのです。でもいくらなんでもこれはひどい。
投稿: 山口一男 | 2009年3月11日 (水) 06時27分
山口一男さん
ありがとうございます。
そうなんです。再分配が貧困率を高めている、というのは、どう考えてもおかしいのですが、そのことが日本では放置されているとでも言えるような状態です。「経済教室」の図では、一時点の国際比較でしたが、追記とした大澤報告での資料では、「1980年代」「1990年代半ば」「2000年前後」の3時点においてグラフ化されており、日本を除く諸外国が税移転によって貧困率を下げるような努力をした形跡がうかがわれるのに対して、日本では、全く見られないことが明確に示されています。
「特異」とおっしゃっておりましたが、「異常」だと思います。政府は役割を果たしていないどころか、悪化させている、まさに逆機能だと思いました。
ひどいのですが、でも、今からでもできることはやらなければならないと思います。そして、現状がひどいので、何かすれば、かなりの効果を期待することもできると思います。
投稿: えふ | 2009年3月11日 (水) 16時13分
えふさん
返答の情報と追記に感謝。あ、「なんがやーーー」の返信は無用です。
投稿: 山口一男 | 2009年3月13日 (金) 01時57分