えふ:赤さん?
赤さん:あ、えふしゃん
え:ご無沙汰でした。今年初めてですね。
赤:はい、ちょっと遅いけど、今年もよろしくお願いします。
え:こちらこそ、お願いします。ところで、こんなところで何をされているんですか?
赤:はい、ちょっと病院の様子を見に行った帰りなのでちゅ。
え:?どこか具合でも悪いのですか?
赤:いえ、あたちはいたって元気でちゅよ。
え:そうでしたか。では、お母さんが?
赤:いえ、お陰ちゃまでお母さんも青ちゃんも順調でちゅ。
え:青ちゃん?
赤:はい、夏に産まれる予定の胎児のことでちゅ。
え:胎児…
赤:はい、青ちゃんと呼んでくだちゃい。
え:はい、…それで、お母さんも青ちゃんも順調でしたら、どうして病院に用事があるのですか?どなたか親戚の方が入院されているとか?
赤:いえ、NICUなどの体制を確かめに来たのでちゅ。
え:ああ、新生児集中治療室のことですね。青ちゃんのためですか?
赤:そうなのでちゅ。
え:この近くの病院で、ご出産の予定なのですか?
赤:いえ、行きつけは近所の産院なのでちゅが、何かあったときにはそこでは対応できないのでちゅ。だから、そういう場合には、どこで対応してもらえるのかを確かめておかないといけまちぇん。
え:なるほど、そうですね。それで、そこの病院はいかがでしたか?
赤:はい、いろいろと問題があるようでちた。
え:そうですか。では、そこは候補からはずすのですね?
赤:いえ、そうできればいいのでちゅが、そんなに簡単ではないのでちゅ。
え:というと?
赤:もう、理想的なところなど、行ける範囲では、ほとんどないようなのでしゅよ。
え:ああ、産科や新生児医療の体制が極めて厳しいのですよね?
赤:はい
え:そう言えば、「危険の大きい出産に24時間態勢で対応する総合周産期母子医療センターに東京都から指定されている愛育病院(港区)が、都に指定の返上を申し出たことがわかった」(ここ)というニュースを聞きました。
赤:……
え:本当に、どうにもならない差し迫った状況になっているようですね。
赤:……
え:赤さん?
赤:…う
え:う?
赤:ぅわ~ん
え:あ、赤さん?
赤:うぇ~ん
え:赤さん、どうしたんですか?お腹でも痛いんですか?
赤:ああ~ん、青ちゃんが、お母さんが、
え:赤さん
赤:出産時に何かあったら、お母さんと青ちゃんが心配で、ええ~ん
え:赤さん……
赤:ぉんぉん、わぁ~ん、あたちだって、泣きたいときだってあるんでちゅから!
え:そうですよね、あの、存分に泣いてください
(10分後)
赤:ひっくひっく…
え:赤さん、大丈夫ですか?
赤:あい、ちょっと気が済みました。
え:そうですか
赤:もう赤ちゃんじゃないのに、こんなに泣いてしまって、えふしゃん、すみませんでした。
え:え、そんな、謝ることじゃないですよ
赤:ありがとう、でも、もう赤ちゃんじゃないのに、泣いて、ちょっとみっともなかったです
え:そんな…大人でも泣きたいときはあるんですよ
赤:はい…
え:ところで、もう赤ちゃんじゃないってことは、「赤さん」とお呼びするのもやめたほうがいいのでしょうか?
赤:あ、いいえ。あたちはもう赤ちゃんではありまちぇんが、でも、これからも、「赤さん」として、世の中のためになることをやっていくつもりですから、これからも、「赤さん」と呼んでください。
え:はい、わかりました。それにしても、赤さん、偉いですねぇ…
赤:そんなことないでちゅ
え:最近は、どういう活動をなさっているのですか?
赤:はい、いろいろですが…、こないだは、少子化問題を考える大人の人たちの会議に呼ばれて講演ちてきまちた。
え:ほぉ、それはそれは
赤:そこの会議では、「史上最年少の講師です」と言われまちたけど
え:そうですよね
赤:机の高さに、背が足りなくて、椅子の上に立ってお話しました
え:それは、お疲れさまでした
赤:ありがとう
え:それで、どういう内容のご講演だったのですか?
赤:はい、少子化のためにできることはたくさんあるということ。その中でも、こないだは、産んだり産まれたりするお母さんや赤ちゃんのために、医療が足りないことがとっても問題だと訴えまちた。
え:ああ、そうですね。
赤:愛育病院の例でもありますが、医師全体の不足、特に、産科や小児科の不足が大きな要因となっており、その分野を担える医師の数をすぐにでも確保しなければ、求められているセンター機能を維持できないということなのでちゅ。
え:なるほど
赤:ただ、それは、先日、えふしゃんとも話したように(ここ)、今現場でがんばっている医師がよりがんばる方向では、無理だということなんです。
え:そうですよね
赤:はい、それはわかりやすいことかと思っていまちたが、なかなか、みなちゃんには理解できないことのようで、驚きでちた
え:ふ~ん
赤:えふしゃんは、女性医師がどれくらい子どもを持ってもお医者さんを続けているのか知っていますか?
え:あ、それ、こないだ、読みましたよ(ここ)。ええと、「大部分が辞めてしまって続けていない」ですよね?
赤:はい、そうなんです
え:それも、医師になって5年とか10年くらいで、ですよね?
赤:そうです
え:ストレートでやってくると、20代半ばで医師にはなれるのでしょうが、だから、辞める人のほとんどは、理由が出産&子育てということなのでしょうか?
赤:そうなんです
え:女性医師のワーク・ライフ・バランス問題は、女性医師というよりも、医療業界全体のワーク・ライフ・バランス問題だっていう話は、こないだもありましたね(ここ)。
赤:はい
え:それでも、女性医師の大半が再就職もあまりしていないし、していてもパート勤務を選ぶとは、ちょっと衝撃でした
赤:はい
え:せっかく、長い教育期間を経て、難しい国家試験に合格して、ハードな研修などにも耐えて手にしたものなのに、続けられないとは、本当に残念なことですね。
赤:はい、それだけではないのですが、せっかくの人材を活かすことのできないような働き方をしなければならない、そこが問題なのでちゅ
え:赤さんのご講演の趣旨は、そこだったのですか?
赤:はい、一刻も早く、女性医師だけでなく、男性医師も含み、コメディカルも含めた、病院や医療現場の労働のあり方を変えなければならない、と訴えまちた
え:それは、立派なことでしたね
赤:ただ
え:はい?
赤:どれだけの人に、ちゃんと伝わったのか、あまり自信がありまちぇん
え:そうですか
赤:お陰さまで会場にはたくさんの人が来て、話は聞いてくれていたと思うのでちゅが
え:ええ
赤:講演前に打ち合わせをしていたら
え:はい
赤:向うの部屋から、「今日、子どもが講演するらしいわよ、観に行こうよ」という声が聞こえまちた…
え:……
赤:でちゅので、話の内容を聞きたかったかどうかは
え:ちょっと怪しいのですか
赤:はい、残念ながら
え:そうでしたか、でも、内容を聞きに来た人もいたと思いますよ
赤:そうでちゅよね
え:はい
赤:子どもでも、できることをしているのに、大人の人がもっと真剣にこのことを考えて、行動してほちいでちゅよ
え:はい、もっともですね
赤:もち、あたちが大人だったら、もうちょっと講演にも影響力があったのかもちれないと思うと
え:うん
赤:ちょっと悔ちい気持ちです
え:そうですね
赤:はい、でも、子どもなのに、講師として呼んでくださって、それには感謝ちています。
え:そうですよね、発想が斬新だと思います、主催者の方は
赤:はい、どうも、そこでは、変わり者と言われておられるようでちゅが
え:……そうですか
赤:あ、でも、いい人ですよ
え:そうですよね
赤:お母さんも、青ちゃんも無事にやってきてくれることが願いでちゅ
え:そうですよね…青ちゃんが産まれると、赤さんもお姉さんですね
赤:はい、でも、もう、青ちゃんもお腹の中でいろいろと考えている時期だと思いまちゅ
え:あ、赤さんは、お腹の中で、産まれてからのことを考えたり、外の世界の話を聞いたりして、勉強されていたんですよね?
赤:はい
え:青ちゃんも、お腹の外から話しかけても、聴いているんですかね?
赤:そうです
え:ふ~ん
赤:お母さんがときどき、動いたりグルグル言ってるよと言いますので、そういうときに、お腹に耳や手を当ててみると、少しだけ動くような気がします
え:へぇ~
赤:こないだも、定期健診でエコーで観まちたら、胎児の雰囲気満載で、居ました
え:いや、まぁ、本物ですからね
赤:だけど、向こうを向きっぱなしで、まだ、女の子か男の子かわからないのでちゅ
え:そうなんですか
赤:どっちでも、青ちゃんですけどね
え:そうですね
赤:青ちゃんだけでなく、これから産まれる予定の赤ちゃんのためにも、早く体制を整えなくてはならないのでちゅ
え:そうですね
赤:あたちは、非力ながらも、がんばりまちゅから
え:はい、でも、あまり無理しないでくださいね
赤:ありがとう
え:今日はお話が聞けてよかったです。ありがとう
【参考記事】
2009年1月14日読売新聞「新生児科医増員へ 計画的養成が必要」(ここ)
同日付同新聞に投書も(ここ)
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