「質」をどう測定しているのかが、気になります。
「図書館司書ら半数超が非正規 低賃金 職員の質低下懸念」という記事を見つけました(ここ)。
全国的に図書館が増える中、蔵書の選定などを担う専門職の司書と司書補の非正規職員化が進んでいる。複数の非常勤や臨時職員の実働時間を合わせ年間1500時間で司書・司書補1人分と換算すると、非正規職員数が正規職員数を上回り、半数以上を占めている計算。1998年度に1館当たり3.1人いた正規職員は、2008年度に2.1人まで減少している。
職員の非正規化がより進んだ時期と、開館時間の延長などの「サービスの向上」が進んだ時期が一致しているのではないか、という気がします。閉館時間が遅くなり、カウンターの職員の対応態度がよくなり、これも、非正規化の「功績」なのではないでしょうか。
これは、非正規の職員を都合よく使うことができるからこそ実現できているサービスであると思われます。
図書館の職員に求められている「質」とはどういうもののことを言っているのか、この記事では判然とはしませんが、そこを知りたいものです。
図書館が、職員が感じのよい対応のできる無料貸本屋であることを、ユーザーが望むのであれば、非正規化は「福音」でしょう。実現しているのですから。
何を「専門性」と考えるのかと、「質」が何かは同列の問題だと思います。だけど、「質」と雇用の正規・非正規とは同じこととは言いきれないとも思います。資格職でありながら、低賃金であるのはなぜなんでしょうか。
生活できないから定着できないのであれば、正規か非正規かということを問うよりも、待遇改善を議論したほうがよろしいのではないかという気もします。非正規でも単価が高ければ定着できるかもしれないし、正規でも異動があれば、同じ図書館での継続勤務はできていないですから。
図書館業界の人が批判なさっていても、一般ユーザーの方々は、図書館に「質」をもとめているのかどうか、それもやや疑問だと思うことがあります。どうなんでしょう。
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えふさん
これはきちんと分析するする必要がありますが、有資格の仕事で非正規化が進んでいるのは司書・司書補、保育士・介護士など女性の多い仕事に多いように思います。これは女性差別なのか、流動性の多い職から非正規化が進み、女性割合の多い有資格の職が流動性が高いために、間接的に女性差別になるのかは分りませんが、ゆゆしきことです。内閣府あたりでも、この辺ちっと調べてもよいと思いますが。
女性の多い有資格の職の「質」を低く見る傾向が、専門職男女の賃金格差を生むことはアメリカでも知られていました。日本はさらに非正規化という要素が加わりますのでさらに問題です。
投稿: 山口一男 | 2009年8月 9日 (日) 16時58分
仕事があり、雇用があり、それが食えない条件であるなら、待遇は改善すべきだと思いますが、女性の多い仕事の場合、専業主婦という働かなくてもやっていける人たちの趣味的労働と賃金競争しなければいけないのが、辛いところですね。
同じ女性が多い資格職でも、「看護士」さんは、ひくてあまた。食えないなんてことは、考えられないですよね。また、看護士さんの場合、正規採用がないから非正規で我慢、というよりも、ワークライフバランスを考慮して積極的に非正規を選択されている方が多いように思います。女性/男性の問題とともに、需要と供給の問題も、ありそうですね。
非正規の看護士さんが、正規の看護士さんよりも比較して「質」が低いかどうかは知りませんが、一定のレベルを保証するのが、資格だと思います。仮に、そのレベル以上の、熟練度やマネジメント力が上記記事のいうところの「質」ならば、非正規雇用であることが、向上を妨げている唯一の原因なのかどうかを、問うてみたいところですね。
投稿: nico | 2009年8月 9日 (日) 20時16分
山口一男さん
非正規化と性別の問題は、強い関連があるように思います。
おっしゃるように、保育士や介護士にも共通の問題があると思うのですが、図書館の場合は、窓口業務部分を業務委託したり、図書館ごと指定管理にする方向に進めようという議論もあるので、より非正規化にさらされやすい側面があるように思います。さらに、図書館に司書を配置することが必ずしも法的に必要でないこととか、他の役所から異動してくる無資格者が司書的業務につくこともできるといったことが、有資格者の資格の意味を薄めているような気もします。
流動性ですが、図書館に限定して言えば、もともと司書として雇われる人は、有資格者で、いったん、就職すれば公務員としてずっと働く場合が多いと思われるので、ポスト自体の少なさと流動性のなさが、正規雇用で新規に雇われる余地を狭めるので、有資格者でも正規に雇用されないことと、非正規でもいいから図書館業務に携わりたいという買い手市場を生みやすいのかもしれません。
有資格者で派遣社員として窓口にいる人は結構いると思います。
投稿: えふ | 2009年8月12日 (水) 07時43分
nicoさん、コメントありがとうございます。
いわゆる「女性職」(ピンクカラー)と言われている業種や、もっと露骨に「女性」の賃金体系は、男性に扶養されることを前提としているために、自力で経済的に自立できるようにはできていないようですね。配偶者控除の適用範囲で働きたい方が、賃金よりも内容で選べるということはあるかと思いますが、配偶者控除がなければ、あるいは、あっても時間単価が高ければ、収入が増えることを歓迎する人のほうが多いのではないかという気もしますが。どうなんでしょう。
いずれにしても、生活のための収入を単独で確保せざるを得ない人と、そうでもない人とで、単価競争をしなければならないという点は、おっしゃるとおりだと思います。
看護師さんの場合は、売り手市場ですよね。そこが大きく違う点かもしれません。あと、当然ですが、有資格者しか参入する余地がありませんし。
介護士さんの場合は、歴史が浅いこともあるかと思いますが、女性が家庭内で担っていた歴史があるから、「誰にでもできる仕事」と見なされやすいんでしょうか。介護保険との関係もあるのかもしれませんが、安い価格設定で、他の主たる収入(一定以上の収入のある夫など)がないとなかなかむずかしいような気がします。
資格の有無ではなく、非正規と「質」で言えば、異動のある正規職員と、異動のない非正規職員では、同じ職場に何年もいることになる非正規のほうが、そこの事情に詳しくなり、専門的業務もよりよくできるという現象は、現実にあると思います。
いろいろと歪で、複雑ですね。
投稿: えふ | 2009年8月12日 (水) 07時57分