差別と日本人
『差別と日本人』 (角川oneテーマ21 A 100) (新書)
辛 淑玉 (著), 野中 広務 (著)
日曜日に仕事に行くことが多かったときのことですが、毎週日曜日朝6時からTBSで「時事放談」という番組がやっていました。今もやっているかもしれませんが、最近、日曜は休みでして、6時に起きる必要がなくなってしまい、この番組を視聴することもできなく、というか、しなくなっています。
そうそう、観ていたときの話ですが、毎週ゲストを2人呼んで、そのときどきの時事問題を論じてもらって主張を聞くというような内容なのですが、ゲストはいわゆる大物政治家などが多かったです。おおむね70歳以上、70代後半以上の方、それも、男性に限定されておりました。瀬戸内寂聴さんは、女性ですが、年齢はすでに90歳も近い方(1922年生まれだそうです)で、出家もなさっていますから、たぶん、女性とはカウントされていないと思われます。言ってみれば、「名誉男性」ですね。あ、これ、称号です、たぶん。
そのようなゲスト状況のもと、野中広務さんは、比較的頻繁にゲストに呼ばれる方でした。この番組を見たり、ご著書を読んだりする中で、以前から関心を抱いていた人ですし、辛さんも以前からご著書を読んだり活動に注目している人でした。
本書は、基本は対談集です。タイトルどおり、テーマは差別と日本人について。差別は、部落差別と在日コリアン差別です。野中さんはご自身が被差別部落の出身であることを公にしておられる方で、それは、もうかなり若い頃からのようです。辛さんは、あるときまでは日本名を使っておられたようですが、途中から本名を名乗るようになられたそうです。
対談をベースに、随所に辛さんによる解説があります。なぜなら、いまだに根強くあるこれら2つの差別問題ですが、漠然と差別の存在を知ってはいても、そんなに詳しい事情は知らない人がほとんどであるというご判断があるのだと思います。かくいう、この人も、この解説によって初めて知ることも多かったです。無知なだけかもしれませんが。
いろいろと驚くようなことが多いのですが、現在総理大臣をしておられる方が、政治家になろうと出馬した最初の街頭演説で、「下々のみなさん」と集まった聴衆に呼び掛けたエピソードについては、感心しました。自分は何のつもりなんだろう、という気がいたします。まぁ、えらいんでしょうねぇ。
種類は違うけれども、日本で日本人からひどい差別を受けてこられた経験をもつお二人の対談だからこそ、語られたのではないかと思われる部分がとても印象に残りました。それは、ぜひ、本書を読んでいただきたいのですけども、野中さんも、こういうことを語るのは初めてだとおっしゃっておられるように、なかなか口にすることのできない、つらい思いを率直に語りあっておられ、心を打つとともに、痛みも感じると思います。
差別者が外の人で単純に「敵」と見なせるのなら、怒ることに集中できるかもしれません。が、差別の結果として、もっとも理解してほしい相手や親しくしている相手との関係にまで、ネガティブな影響を及ぼすとしたら、さらに、その大切な関係まで失ってしまうとしたら、怒りよりもずっと深くて大きな悲しみを感じるのではないか、という気がします。
そこが、被差別者とされる方々の困難のもっとも過酷なところかもしれない、という気がして、それに、圧倒されました。
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辛淑玉さん。
同和問題に関わる事実や論争の多い点は公平な記述が必要です。
次の指摘が為されてます。
09年8月25日 火曜日付け
『差別と日本人』 解説に問題多く、角川書店に資料提供
全国地域人権運動総連合
http://zjr.sakura.ne.jp/?p=507
投稿: ウーン | 2009年8月26日 (水) 20時08分