フレキシキュリティ、勉強してみました。
先日書いたフレキシキュリティのことですが(ここ)、ざっと読んでみました。労働政策と教育政策をあわせた社会政策なのだ、という著者の主張に納得。おもしろいですね。
この論文での定義ですが、「近年のEUの労働市場政策の要として認識されている、労働市場の柔軟さ(flexibility)と労働者保護(security)を両立させた政策」です。
ここで取り上げているデンマークとオランダですが、この政策が成功し、「労働者の転職が容易で実際に労働移動が多いが、労働者の生活が安定している国」として位置づけられているのだそうです。
日本での労働市場と生活の安定さのかかわりと言えば、労働移動が容易であることと安定さとは必ずしも結びついていない、むしろ、転職は不安定さの象徴のようなイメージがあるのではないでしょうか。それゆえに、生活の安定さをもとめる(もとめざるをえない)労働者は、現在所属している職場からの転職を考えることがあまり容易ではなく、転職したことのツケとして生活の不安定さに甘んじなければならない、ということにつながっていると思います。
本稿では、「リスボン戦略」についても、はじめに触れられています。これは、2000年3月にリスボン欧州理事会で決定され、「よりよい職と、より一層の社会的結合を伴った、持続可能な経済成長を実行しうる、世界で最も競争力のあるダイナミックな知識基盤社会」を築くという、EUとしての戦略なのだそうです。壮大ですね。
ここで、具体的な数値目標を設定している点がすばらしいと思います。壮大な理想を述べるだけでは、それが達成されたかどうかを客観的に測定することがむずかしいですから。2010年に男女計の就業率61%から70%、女性就業率を51%から60%へ引き上げることです。失業率ではなく、就業率を指標にするのは、「失業により社会から排除されてゆくことを防止し、また、非労働力化している人々を労働市場に取り込むことで高齢化社会に対処する、との観点から」だそうです。
EU委員会が2007年6月には、政策文書「フレキシキュリティの共通原則をめざして:柔軟性と保護を通じてより多くの人に、より質の高い仕事を」を公表しているそうですが、ここで、EUのめざすフレキシキュリティ政策は、4点で定義されるのだそうです。
1.柔軟で信頼性の高い労働契約
2.包括的な生涯教育戦略
3.効果的な積極的労働市場政策
4.(労働者の労働市場内移動に際し、適切な所得保障と就業促進策を備えた)現代的な社会保障制度
です。
デンマークの実業者に対する所得保障は、失業保険と社会扶助。
デンマークは職業訓練がとても進んでいる。
あとは、オランダについて書いてあります。
この表、なかなかいいと思います。イギリス、フランス、ドイツ、デンマーク、オランダの5カ国の、フレキシキュリティ施策(労働契約、生涯教育、積極的労働市場政策、社会保障)とフレキシキュリティについて労使の役割が整理されています。
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