貧困であること、は、そうでないところから理解するのはむずかしい。
『この世でいちばん大事な「カネ」の話 (よりみちパン!セ)』(2008年12月刊、理論社)
西原理恵子
本書は売れているらしいですね。発売1月後の2009年1月には4刷が出ています。
内容は、マンガ家として成功なさった西原さんの生い立ちや、絵で稼げる人になろうとしてから成立するまでの経緯などが、飾らない言葉で書かれています。
「カネ」の話は、日本では避けられがちですが、最近では、それに異議を唱える立場の人も少しずつ出てきているように思います。西原さんは、「カネ」を自由を手に入れるためのものとして、自ら働いて「カネ」を稼いで暮らしていくことの大切さを実感を込めて語りかけてこられます。想定する読者は、主に若者のようです。全体に、漢字にルビがふってありますし、平易な言葉で書かれています。
ご自身の郷里での貧しい生活から現在に至るまでの話の後は、アジアの貧しい地域で生きる子どもたちの様子へと変わります。一晩中ゴミの山の中でクズ拾いをして得たお金が、その日家族が食べる食事分にしかならないこと、そして、またその晩は翌日の食事のためにゴミの山に出かけていく子どもたち。この子どもたちは、永遠に貧困から抜けることができないのだろう、と西原さんは言います。また、有害物質の山でもあるゴミの山に通い続ければ、きっと長生きすることもできないのだろう、と。
本書には、グラミン銀行のことも出てくるのですが、目次で見つけたときには少し驚きました。ですが、アジアの貧困地域のことに高い関心を寄せていることがわかると、グラミン銀行の話題が出てくることも自然と感じられました。
働いて「カネ」を得る手段を持たない将来設計をしているかもしれない若い女性への苦言も呈されています。相手の男性の気持ちに依存するようなことは、どれくらい危ういことか、と言います。
本書は、ファイナンシャルリテラシー教育の一環として理解することができるのではないかと思います。さらには、「働くこと」に対する姿勢を通して、どう生きていくのか、ということも考えさせられる内容になっているのではないでしょか。
それにしても。経済的な格差、特に、貧困って、見えないところでは、想像もできないことなんだな~と最近つくづく思います。それで、貧困とは無縁の人たちが世の中のしくみづくりに関与するので、貧困の中にある人たちのことは頭の中にないのです。悪気はなくても。そこをどうやってクリアするのかが、課題かと思いました。
« 中秋の名月 | トップページ | 貧困率、調査するそうです。 »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 日本に住んでる世界のひと 読書日記(2023.01.09)
- 『告白 岐阜・黒川 満蒙開拓団73年の記録』(2022.03.13)
- 久しぶりに、読書感想(2021.09.27)
- 息の長い運動に(2020.07.24)
「社会のしくみを学習。」カテゴリの記事
- 映画「グリーンブック」(2019.03.26)
- a stay-at-home parent は「手伝う」ではありません。(2018.06.22)
- 「国立大学の潰し方 (7つの行程)」が秀逸なので、紹介。(2018.06.17)
- 原爆の日(2017.08.06)
コメント