ぺドファイルと臓器売買の話。
上映が決まったとき、相当話題になっておりましたが、実際、観てみて、よく一般の映画として製作したな、と思いました。
映画館で上映しているときにも知ってはいたのですが、とても映画館で見る気にはなれず。DVDになるのを待っているうちに、忘れてしまい。先日、思い出すことがあったので、レンタルビデオ屋に行ってみたところ、ありましたので、借りることができました。
『闇の子供たち』
出演: 江口洋介, 宮崎あおい, 妻夫木聡, プラパドン・スワンバン, プライマー・ラッチャタ
監督: 阪本順治
DVD発売日: 2009/02/25
時間: 137 分
まぁ、ひどい話なんです。が、問題の背景は、そう単純な話でもなく、いろいろな深刻で難しい要素が絡まりあっているのだと思います。
ひと言でいえば、タイの子どもを性的に搾取する話と、タイの子どもの臓器を奪う話です。
日本人の子どもに臓器移植をするための、子どもの臓器を求めて、タイに手術をしにやってくる日本人のために、そのための臓器として見なされるタイの貧しい子ども。
売春宿で、外国人客の性の相手をさせられる子ども。男女ともに、まだ小学生くらいの見た目ですから、からだも子どものままです。
途上国の貧しい子どもを、先進国の大人が買う、ということでも、南北問題というか、国家間の経済格差や人権意識の問題があります。
が、それだけなら、比較的単純に、「子ども買春反対!」というだけでいいんですけど。
臓器を移植しないと助からないと言われている日本の子どもと、その子どもの命をなんとか救いたいと考える親の思いや、日本国内では子どもの臓器移植ができない制度上の問題もかかわってくるのです。映画の中では、人工心臓も大人用のものしか開発されておらず、子どもがそういった医療器具の移植を受けることもできないのだというセリフが出てきます。その辺りの事情は、知らないのですが、そうなのでしょうか。
日本国内では実現できないことを、他国で実現しようとするのは、たとえば、代理母出産など別の医療にかかわるものもありますが、そのときに、共通して立ちはだかるのは、医療費など経済的な問題です。
そこで、再度、経済格差や通貨のレートの問題も出てきて、相対的に費用が安い国として、タイなどの国が選ばれることになるのでしょう。
そこに、ブローカーが仲介しているとすれば、それは、もうビジネスなんでしょうね。すごく儲かるし、ヒトの弱みに付け込んでいるので、秘密裏に行われ、表に出ることもない。
貧困と教育と人権などなど、構造的な問題で、改善していくにも時間のかかる事柄が複雑にかかわりあっていて、なんとも言えない気持ちにさせられます。でも、貧困も教育も人権意識も、変えることができると思います。地球の回転方向とか、地軸の傾きとかとは違い、人が作ってきたことなのですから。
自分の子どもは大切だけど、よその子どもは大切ではない、という選択をするのは、追い詰められた状況では、わからなくはないのです。
脳死や臓器移植の問題は、それだけでも、十分に難題です。
しかし、この映画での主題は、脳死の子どもの臓器を、臓器移植をしないと助からない子どもに移植することの、倫理上の問題ではありません。
移植されるのは、そのままで元気に生きていけるはずの子どもの臓器なんですね。
日本国内では、法的に禁止されているさまざまな物事を一時的にでも解決するために、外部化することは、もう当たり前のように行われています。
日本人がやりたがらないきつい仕事を外国人労働者に頼っていることとか、農村花嫁とか、代理母とか、性産業従事者とか。
売春宿でHIVに感染し、そのままAIDSを発症した子どもをゴミ袋に入れてゴミ収集のトラックに入れて捨てる、っていうのは、驚きです。ちょっと、にわかには信じられない光景で。本当なんでしょうか。
相当に衝撃的なことがいくつも出てきますので、鑑賞後の感想もあまりまとまらないのですけども、当然というか、仕方ないというか。
直視するのは、エネルギーのいる内容と言えましょう。
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えふさん、ボンソワール
わたしも、この映画観ました。
http://blog.goo.ne.jp/miauleuse/e/f11f93de1edc833c8dea84a7878e452a
さまざまショックなシーンがありました。
売春宿で病気を移され、「つかいものにならない」とゴミ袋に入れて捨てられた女の子。はいずって故郷に帰ったら、家族からどのような扱いをうけたのか・・・を観たときがかなりショックだったかも。
病気に対する知識、人権に対する知識、そして経済力がないとどうにもならないのでしょうかね。
「国境なき医師団」のCMで「国の境目が命の境目であってはならない」とありますが、この映画で扱われている題材は国境なき医師団も関与できないところで展開しているものですよね。
うちの相方が仕事でフィリピンに行くことが最近続きました。相方曰く「日本でいう格差社会なんてかわいいもんだ」とのこと。
だからといって、日本はまだまだましなのだ、と、失業率の増大と就職率の低下を放置していいわけもなく。
6億円、ポンと納税できる首相をいただく我々は、
上を見ても下を見てもきりがないです。
投稿: miauleuse | 2009年12月27日 (日) 22時11分
miauleuseさん、ボンジュ~。
そうですね。タイだけでなく、フィリピンのスラムとかも本当に底辺なのでしょうね。スモーキーマウンテンで一日中ゴミ拾いをして生活する小さな子どものドキュメントなどを観たことがあるのですが、ゴミの山で自然発火して毒ガスを出している上を靴もはかずに歩いて換金できそうなゴミを拾い集め、それで一日分の生活費を稼いで、食事をすればそれでまた所持金ゼロになるような生活を繰り返している姿は、言葉を失うものがありました。
日本では、そんなことはないかもしれませんが、絶対的貧困と相対的貧困ではまた問題の種類が違うのだと思います。
絶対的に格差が開いてから対策を取ろうとしても、相当むずかしいだろうと思われるので、少しでも早期になんとか手を打つことが必要なのかも、と思いますねぇ。
今年は、外でキャンプしないで年が越せるのだろうか、ということが気になりつつ、ドバイショックとやらが知らないうちに起こっていたので、それが来年以降も影響するのかなぁと思ったり。
グローバル化は難しくて、よくわからないです。
投稿: えふ | 2009年12月28日 (月) 07時38分