レガタム繁栄指数、というのがあるそうです。
「フィンランドが世界一繁栄している理由<リンク集>」(ここ)に、このブログの記事のひとつを紹介してくださっているのを発見しました。ありがとうございます。
その記事というのは、「フィンランドが男女平等政策に成功した理由を考えてみた。」というものです。奇特な方は、どうぞご覧ください(ここ)。
ま、この人(=私)のブログのことはともかく、最初に挙げたリンク集はフィンランドに関する情報をいろいろと紹介されておりますので、関心のある方はどうぞ。
レガタム繁栄指数、というのがあるそうです。ご存知でしたか?
この人は知りませんでした。で、にわか勉強です。
ロイター(ここ)より
世界一繁栄している国はフィンランド、日本は16位=調査
2009年 10月 27日 16:22 JST
[シンガポール 27日 ロイター] 民間研究機関レガタム研究所が26日発表した2009年版「レガタム繁栄指数」ランキングでは、北欧のフィンランドが1位となり、日本は16位でアジア最高位となった。
同指数は、世界人口の約9割をカバーする104カ国・地域を対象に、経済成長や民主主義の度合い、生活の質などの要因を組み合わせて算出する。
ランキング上位を見ると、スイスが2位に入っているが、3位がスウェーデン、4位デンマーク、5位ノルウェーと北欧諸国がほぼ独占。このほか、オーストラリアが6位、カナダが7位、米国が9位、英国が12位などとなっている。
アジアでは、日本の16位を筆頭に、香港が18位、シンガポールが23位、台湾が24位となった。一方、目覚しい経済発展を遂げる中国は75位にとどまった。
レガタム研究所の副所長を務めるウィリアム・インボーデン博士は、アジア各国・地域の順位が相対的に低いのは、民主主義と個人的自由に関する部分でポイントが低いことが主因だと指摘。「多くのアジアの国は経済のファンダメンタルズは良好だが、本当の繁栄はお金だけではないことを指数は物語っている」と述べた。
2009年版「レガタム繁栄指数」ランキング(上位20)は以下の通り。
1.フィンランド
2.スイス
3.スウェーデン
4.デンマーク
5.ノルウェー
6.オーストラリア
7.カナダ
8.オランダ
9.米国
10.ニュージーランド
11.アイルランド
12.英国
13.ベルギー
14.ドイツ
15.オーストリア
16.日本
17.フランス
18.香港
19.スペイン
20.スロベニア
日本は16位だということはわかりましたが、しかし。
上位だけでなく、下位というのが、この指数で最下位から数えた20位までも見てみたいですね。どういう国が入っているのかを知ることで、この指数の特徴もわかるような気がしますから。
85位 ベラルーシ
86位 レバノン
87位 バングラディシュ
88位 エジプト
89位 ザンビア
90位 ネパール
91位 モザンビーク
92位 ウズベキスタン
93位 カンボジア
94位 イラン
95位 ケニア
96位 アルジェリア
97位 タンザニア
98位 ナイジェリア
99位 パキスタン
100位 カメルーン
101位 中央アフリカ
101位 イエメン
103位 スーダン
104位 ジンバブエ
上位と下位を20位ずつ見ても、それほどわかった気にはなりませんね。
なにゆえ、この順位なのか。どういう基準で測定したのか、などなど、もっと詳しい情報が知りたくなってきます。
あ、このニュースの元となったレガタム研究所(LEGATUM Institute)のサイトがありました。英語なのですが、まず、この指数について、若干の説明があります。
この調査は、世界人口の90%をカバーする104カ国を対象としているそうです。
The 2009 LEGATUM Prosrerity Index(ここ)
それから、Executive Summaryがありますね(ここ)。
Fact Sheetがあります。コンパクトにまとめてあります(ここ)。
こういう世界ランキングですが、最近増えているのでしょうか。単に、この人が最近気がつくようになっただけなのでしょうか。
ともかく、○○指数については、どういう尺度で測定しているのかが気になるところです。
そこで、このレガタム繁栄指数がどういう要素で構成されているのか、判断されているのかについて、ちょっと調べてみました。
まず、9つの要素を含んでいるそうです。その9つあるサブインデックスを見てみました。
・経済原理(Economic Fundamentals)
・企業とイノベーション(Entrepreneurship and Innovation)
・民主主義制度(Democratic Institutions)
・教育(Education)
・健康(Health)
・安全と治安(Safety and Security)
・自治(Governance)
・個人の自由(Personal Freedom)
・社会資源(Social Capital)
それで、このそれぞれについて、報告書全文では、解説がなされているのでした。ここまで見れば、なるほどと思うことも多々ありまして。
サブインデックスだけ見ているのでは、「個人の自由」ってなんだろう?と思っていました。何を個人の自由と見なしているのかが知りたくなってきます。「社会資源」も、何をそう見なしているのかについて、気になります。その他のことは、なんとなくても、想像がつくわけですけども、それぞれ、正確には何を指しているのか、どういう基準を使用したかなどなど。
ですので、理想的には、順番に1つ1つ見てみることですが、より詳細に知りたい方はご自分で、このサイトに訪れていただくことにして、ここでは、「個人の自由」と「社会資源」について、何を指しているのかを見てみたいと思います。
「個人の自由」は、市民が自分の人生や人生を豊かにすることに関する選択肢を、どれくらい自由に選ぶことができるのかを測定しているのだそうです。
個人の選択の自由に対する満足、宗教、言論(speech)、運動の自由と同様に、移民とマイノリティに対する社会的な耐性(tolerance)への理解があるかどうか。
「個人の自由」の変数は、4つだそうです。
・選択の自由に対する満足度
・スピーチ、運動、宗教の自由度
・移民への寛容度
・少数民族(エスニック・マイノリティ)への寛容度
ここまで見てみると、この指数で意味している「個人の自由」のことがなんとなくわかったような気がしますね。
日本は総合的には、16位ですが、その総合的な得点の平均と、この「個人の自由」での得点を比較すると、総合得点の方が高いようです。つまり、日本に関しては、「個人の自由」に関する評価は、低めだということですね。乱暴に言ってしまえば、個人の人生選択の幅があまり広くはない、ということでしょうか。世界ランキングでは、22位です。
次に、「社会資源」ですが、信頼できサポートされる社会のネットワークや関係性をどれくらい持っているかを測定しているようです。
ここに含まれる変数は、以下のものに対する満足度のことのようです。
・他者への信頼度(reliability)
・友人の重要性
・他者への信頼性(trustworthiness)
・芸術分野の組織(organization)への帰属関係(membership)
・スポーツ分野の組織への帰属関係
・環境分野の組織への帰属関係
・宗教分野の帰属関係
・寄付
・宗教の重要性
・知らない人への手助け
・夫(妻)の地位
・ボランティア活動
括弧内に英語を併記しているのは、どういう風に和訳すればより適切なのかについて、ちょっと自信がないからですが。他の部分も、間違っているかもしれません。
総合得点平均と、この「社会資源」というサブインデックスのスコアの比較では、日本はこのスコアが最も、平均より下回っていますこのサブインデックスだけを、国際比較したものでは、なんと、40位です。ここでも、乱暴に言うと、日本では、人々はあらゆる人間関係から得られる満足度が低いということなんでしょうかね。逆に、人間関係から受けるよくないストレスが高いということなのかもしれません。いや、わかりませんが。
それで、全体を通して、何がわかったのか、ですけども、「キー・ファインディングス」として、10項目を挙げております。
1.繁栄している国は、広範囲にわたって、強い。サブインデックスの順位に、大きな差がない。どのサブインデックスも、高位に集中している。
2.ミクロレベルでの企業活動は、マクロレベルでのよい経済政策を必要とする。
3.幸福は、機会、健康であること、関係性、望むことを選択できる自由である。
4.繁栄は、現在は、北大西洋に集中している。
5.歴史は運命ではない。
6.良い統治は、ライフに対する満足と経済的な進化に中心を持つ。
7.繁栄は治安を意味する。
8.自由は分断できない。
9.強いコミュニティは、弱い政府よりもよい。
10.お金で幸せは買えないことは真実である、あなたが貧困ではないのなら。
報告書全文の中の、この部分は、3つ目と8つ目が入れかわっています。なぜかはわかりません。
そんなことで、レガタム繁栄指数とはどういうものか、なんとなくわかりました。
「繁栄」とか「豊か」というのは、人間の幸福をどう捉えるかによって、随分と変わってくるものかと思います。このレガタム研究所の方々は、経済的な繁栄ばかりではなく、人と人との関係、個人の人生の選択肢の自由度など、金額のように即数字として把握できるものではない領域を数値化してみた点で、すごいと思います。
いろんな指数も、同様のご苦労がおありかと思いますが、あれこれ、批判があったとしても、こういう試みによって、よその国との比較が可能になることにより、自分がよく知っている国や住んでいる国のことだけでなく、世界全体での位置などが明確になることは、非常に意義深いことかと思いました。
あ、この記事の冒頭にご紹介しておいた、この人の過去の記事を紹介いただいているサイトのことですが、「おまとめマン」さんという方がなさったお仕事だということを知りました。一部では有名らしいのですが、この人は知らなかった「おまとめマン」さんのことについては、ここにありますように、調べたいことを依頼すると調べてくださる方だそうです。
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えふさん
貴重な情報をありがとう。レガタム指数知りませんでした。国連の人間開発発指数(HDI)より、社会的要素を組み入れている分HDIより日本の順位が下がるますね。上位を見る限り、OECDの中では生活満足度の高い国が上位にきていますね。多くの人も生活満足度は人間開発的豊かさ(所得、教育、健康)とともに、社会的な自由さや「社会資本」の豊かさが関係しているということでしょうか。SOCIAL CAPITALを指標化する試みは、社会学的にも興味あるところです。だた、比較可能なデータを集めるのは大変ですね。
投稿: 山口一男 | 2010年1月12日 (火) 01時45分
山口一男さん
ありがとうございます。
そうですね、人間の豊かさなどについて、どう考えているのかがわかっておもしろい指数です。
あ、「社会資源」ではなくて、「社会資本」ですね。なんとなく、social resourceだと読み違えていました…。
必要なデータを民間研究所や一研究者が集めるのはむずかしいと思われるので、その国のデータの二次利用の進み方にも関係してくるのかもしれませんねぇ。
投稿: えふ | 2010年1月14日 (木) 08時00分