牡丹の島、大根島。
これは、庭に咲いていた牡丹です。かなり見事な咲きっぷりですよね?
咲く時季が今年は少し遅いです。全般的に、今年は春の花の咲くのが遅いらしいのですが。ちょうどタイミングよく、咲いたときに観ることができました。
牡丹は、今ではいろいろなところで観ることができるのだと思うのですが、大根島という島がすごい産地だということをご存知でしょうか?
このGWに、この人(=私)は、そのことについて、改めて認識する機会を得ました。大根島という鳥取県と島根県の間にある中海(なかうみ)という湖に浮かぶ島があるのですけれども、この小さい島で、昔から活発に栽培されているだけではなく、この島に住む女性たちが、日本全国に行商に出かけて、あちこち売り歩いたという歴史があるのです。
北は北海道、南は沖縄、東京の島嶼部にまで出かけているようですので、もしかすると、お宅の庭にある牡丹も、最初は、この花売りの女性たちから購入したところにルーツがあるかもしれませんよ。
そんなことを、知らないで、なんとなく、牡丹という花があることと、大根島が産地だということは、知っていたこの人でした。
花を売りに行くのは、主に女性で、そのおうちの「お嫁さん」だったのです。ですので、まだ小さい子どもは、お父さんと義母、義父たちと留守番をすることになります。
ひとたび出かけると、数カ月も泊まりながら売り歩く人も珍しくなかったようで、たまに帰ってくると子どもは大喜びですが、再度出かけるときになると大変さびしい思いをしていたようです。
牡丹だけではなく、花卉を売り歩くのが女性なら、売るための苗を作ったり畑をしたりしつつ、家事全般、子育て、両親の世話など家を守りながら、行商する妻のサポートをしたのが、夫である男性だったという、そういう世界が昭和40年頃から平成にかけて続いていたということなのでした。
ですので、島の学校では、参観日に行くのはお父さん、家で洗濯モノを干すのもお父さんという、当時の他の世界とは違った世界が繰り広げられていたようです。
花卉を購入するのに、今では、身近にある花屋さんやホームセンターで手軽に買えるわけですが、当時は、そういう店がなく、行商が来て買うことができるというしくみが成立していたようです。
そんなことで、牡丹、この庭の牡丹はどこで購入したものかわかりませんが、いろいろなエピソードがあるものだと思いました。
今でも、大根島は牡丹の一大産地ですけれども、花屋のシステムが発達してしまったので、行商も下火になってしまいました。
ただ、輸出などは盛んにしているのだそうです。このことも、知りませんでした。
行商をしていた、今では高齢の女性たちにいろいろと聞きとり、それを聞き書き集としてまとめたものを読んだのですが、こういう仕事、とても重要だと思いました。
高齢の女性も、すでに、向こうの世界にいらした方も多く、聞き取れたのは限られた方々なのだそうですが、それにしても、貴重な仕事だと思います。
「地域女性史」というジャンルで、全国各地の地域の女性たちが自らの地域の女性史をまとめる仕事をそれぞれ行っておられるのですが、これは、ここ10年くらい、いろいろな聞き書き集が出てきているように思っています。
もちろん、もっと先駆的な仕事もあるのでしょうが。
地域で、自分たちの直接の先輩たちが、どういう生活をしていたのかを記録し、記憶する仕事は、地味ですが、とても興味深いと思います。
中央から見た「大きな仕事をした偉人の歴史」だけが、歴史ではなく、名前が残るわけではないけれども、それぞれの生活を精いっぱいやっていた人たちの営みが、一つでも多く残されるといいなぁと思いました。
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