ノルウェー大使館での出版記念シンポジウム。
昨日、こういう集まりに出かけてきました。ここです。
シンポジウム開催にあたって
近年、配偶者や恋人など、親しい間柄からのDVが大きな社会問題となっています。DVの被害に直接あうのは、そのほとんどが女性たちですが、その家庭の中で暴力を目撃し、時には自身も暴力を受けてきた子ども達の問題は長く見過ごされてきたように思います。2004年の児童虐待防止法の改正で、DVの目撃が心理的虐待にあたるとされ、今、様々な団体が傷ついた子どもたちへの回復の手立てをはかろうと活動を始めています。しかし、DVの加害者である夫が子どもにとっては父親であるということは、とても子どもの心を複雑に傷つけており、そのDV加害者の更生に対する対策は、日本ではまだ立ち遅れているのが実状です。
このたびん、DV問題をテーマにしたノルウェーの絵本の日本語版『パパと怒り鬼ー話してごらん、だれかにー』の出版に際し、ノルウェーと日本の臨床の専門家を招き、被害者支援、及び加害者プログラムの現状と課題について話し合う場を設けます。
★プログラム概要★
① ノルウェー王国大使館挨拶
② 絵本『パパと怒り鬼』内容紹介: 中田慶子(NPO法人DV防止ながさき代表)
③ 講演(通訳あり):オイヴィン・アスクイェム(精神看護師・家族セラピスト)
④ 講演: 信田さよ子(原宿カウンセリングセンター所長)
⑤ 講演者質疑応答
⑥ レセプション(自由参加)
ノルウェーでは、絵本の前に、アニメ映像による「アングリーマン」(angry man)という作品が発表され、それが話題になっていたそうです。あ、これは、もともとのノルウェー語でのタイトルを英語に訳したものなのですけど。
その後、同じ主題を絵本にするということがあり、そのノルウェー語の絵本をノルウェーで見つけた翻訳者の一人でもある青木順子さんの熱意が、日本語翻訳を出して、日本に紹介するきっかけになったと説明がありました。
絵本は、この人(=私)は読んだのですが、表紙の男の子(名前は、ボイ)のお父さんの中から、ときどき、怒り鬼(いかりおに)が出てくるという表現で、お母さんに対するDVを理解していることが描かれています。そして、誰かに助けてもらいたいと思いながら、誰にも言えない気持ちが描かれています。
このシンポジウムの中でも説明がありましたが、日本では子ども向けの絵本と言えば、深刻なものはほとんどなく、こういった暴力を扱うものは、出版することが難しい現状があるそうです。
なので、翻訳絵本として出版しようと、いくつもの出版社に持ち込まれたそうなのですが、そういう理由からなかなか出版を引き受けてくれる出版社を見つけることができなかった苦労も語っておられました。
そんななかで、(株)ひさかたチャイルドさんは、採算がとれればよい、と様々な工夫もした上で、お引受けになったそうです。この話も大変素敵でした。
ノルウェーでは、日本に比べ、DV対策の中でも加害者対策もかなり進んでいるようなのですが、DV家庭に育つ子どもへのケアや支援も30年くらいは歴史があるそうです。
ただ、それでも、裁判所などのDV理解はまだまだだそうで、DVのある家庭だとしても、夫婦が離婚した後にも、子どもとの面接交流権が認められやすく、そのことが問題となっているそうです。
これは、「どんな父でも、父は父。父と会うことも、子どもの権利」という子どもの権利が強く認識されていることが背景になるのだそうです。
そして、皮肉な見方をすれば、日本は、子どもの権利に対する認識が不十分なため、むしろ、DVの父親とは会わないようにさせることもできるのかもしれません。
両親間のDVが、その子どもにとって、どのくらいの害を及ぼすのか、そのことと、「どんな父でも、父と会い続ける事が子どもにとって意味のあること」を比較した場合の見解というのが、まだはっきりと定まっていないのだろうと思いました。
信田さんは、ご自身の加害者プログラム研究と臨床経験から、
①DV加害者は、ほぼ「自分が被害者だ」と思っていること、
②加害者プログラムが必ず備えなければならない3条件として、加害者に対して、「自分の暴力に対する説明責任を負わせること」「DV被害者(相手と子ども)に対する心からの謝罪」「暴力被害に対する賠償」を持つこと、
だとおっしゃっていたように思います。
離婚後の面会の権利については、これらのことがきちんとできるのであれば、会うことも否定できないが、DV加害者が暴力を振るった後は、謝罪をしながら、再度暴力を振るい、謝罪を繰り返すところから、信田さんのおっしゃる「心からの謝罪」というのは、かなりハードルの高い要件だと思いました。
他の2つの条件にしても、自分の行うDVの責任を被害者に負わせる姿勢から180度の転換をするのは、相当難しい問題だと思いました。
しかし、被害者を支援していくため、被害防止の観点からも、加害者対策は必要だと強調されていました。
オイヴィンさんのお話の中で印象に残った点は、
①DV男性の更生プログラムを、オイヴィンさんたちが活動されているAlternative Violence (ATV)は、ヨーロッパで初めて導入した団体だそうですが、初期からフェミニスト団体と協調しつつやってきたという点。
②DVという問題を理解することの重要性の強調、
③暴力の影響を理解すること
④同じDV家庭に暮らしていても、父、母、子はそれぞれ別のストーリー(違う物語)があること、
⑤DV加害者の更生プログラムは、身体的DVがない場合においては、変化してくことが難しいということ
などなどでした。
これまで長年かけて学んでしまった暴力という手段を使わないで人間関係を構築したり継続していくことは、言うほど簡単なことではないと思います。
しかし、DVが全くなくなる、というのではなく、多少なりとも軽減されるとか頻度が下がることで、危険性が少なくなるのであれば、被害にある女性や子どもにとっても有益なことだと思います。
現実的な目標としては、DVが全くなくなる、というところではなくて、もちろん、それが理想ですが、多少なりとも言動が変容するのであれば、そのプログラムを受講し続けることに動機づけを持たせるような、そういう方向が考えられてもいいのではないかと思います。
DV加害者のプログラムは、難しい問題が山積しているのですが、何かをすべきなのではないかと改めて考えました。
レセプションは、シンポジウム会場とは別棟の大使公邸にて行われました。おいしそうな食べ物がいろいろ出されました。
これは、この人がおとりになった皿です。よく見ると、輪っかがセットされていることがわかると思います。これは、ワイングラス掛けなんですよ、奥さん。←だれ?
つまり、立食パーティの時に、飲み物を持ちつつ、お皿も持つと、どうやって皿の上の食べ物を食べるかという深刻な問題があるわけですけれども、これは、その問題を見事に解決する方法ですね。
ただし、ワイングラスのような細い部分のあるグラスでなく、ジュースなどを飲む場合の寸胴のグラスの場合には、これも、使えないのでした。
ワイングラスに注ぐ飲み物を飲まない人は、飲み物なしで、食えってことです、たぶん。
テーブルセッティングも素敵でした。お花とキャンドルです。
牡蠣もものすごい存在感を出しておられました。
が、この人は、召し上がりませんでした。
気分じゃなかったのでした。
いろいろと召し上がっているうちに、デザートの頃合いに・・・。
小さめのケーキがいくつもあったので、好きな方はいろいろ食べられて楽しいと思いました。
この人も、イチゴの乗ったのがおいしいという周囲の方の勧めに従い、さらに、小さいモンブランを召し上がりました。
フルーツでは、いちじくがよかったです。他のは、召し上がりませんでしたが。
珈琲もおいしかったです。
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