『プロメテウスの罠ー明かされなかった福島原発事故の真実』
朝日新聞で連載されているのは知っていましたが、ときどき見るときに読んでいた程度で、毎日連載されていたことは、つい最近知りました。
また、その連載がまとまって出版されていたことも、同時に知りました。
「プロメテウスの罠」と題された新聞連載は、まだ続いています。
本書は、新聞連載の第1シリーズから第6シリーズを、6章立てにして、構成されています。関係者への丁寧な取材に基づいた、あのとき報道されなかった出来事が描かれています。
別のマスコミでも、放射性物質の飛散状況を予測するSPEEDIがなぜ使われなかったのかなどの批判がありましたが、本書によれば、計測はしていたが、省庁の所管や縦割りの情報統制のされなさのゆえに、また、国民がパニックに陥るという判断のもとに、公開されないままに、地域住民を被曝させてしまった様子が克明に明らかにされています。
ときどき、連載で読んだところが出てきたりして、懐かしく感じつつ、また、連載で読んだ前後が気になっていたところを、きちんと埋めることができて、とてもすっきりしました。
やっとの思いで得ることのできた研究職を投げ打って、放射線量を計測するために原発付近に出向いて行った木村さんの話や、海洋汚染について『ネイチャー』誌に投稿しようとして、組織的な反対にあい、断念せざるをえなかった研究者の方の話など、正確な情報を国民のために提供しようとする方々の姿に、まだまだ、こういう人たちがいるのだという気がして、救われる思いがしました。
本書をもとに、震災直後の原発対応の様子をふりかえってみると、本当はわかっていたことなのに、公開していないこと、公開することを遅らせたことが多いことに驚きます。
この人(=私)は、情報がわかっていないのか、と思っていたのですが、それも、あまりに、浅はかな理解だったと思いました。
具体的には、どうだったのか、もちろん、関係者の中には取材を拒否している人もいるわけですから、完全に正確な情報とも言い切れないのですが、それでも、出来る限りの取材を重ね、当時の状況を再現しようとしているもので、今後の単行本化も楽しみです。
この連載が、何かのジャーナリズムに関する賞などを受賞するといいなと思いました。
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