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2012年4月23日 (月)

災害後のこの国について、考えさせられました。

20120422c

「戦後」が終わり、「災後」が始まる。
御厨貴 (著)
千倉書房、2011年12月刊

 政治学者で、オーラルヒストリーの手法で研究されている御厨さんの、あちこちでの対談と書きおろし部分とで構成されたものです。

 御厨さんと言えば、この人(=私)には、今もやっているのかどうか知りませんが、TBSで日曜朝6時からの『時事放談』の司会者として馴染みのある方ですが、司会者ではなく、学者なのでした。

 最近では、震災以後の復興会議で議長代理も務めておられたのでしたが、本書では、その過程について触れながら、日本には、特に、民主党政権以後には、政治はないという「非政治」という表現での批判には、なるほどと思いました。

 この会議を立ち上げるにあたり、当時の菅さんからは、方向性を示されなかったというのには、圧倒されました。

 ふわふわです。

 特に驚いたエピソードは、菅さんが「官僚は信用できるのですか?」と質問したというところでした。政治主導をうたって民主党で最初に首相になったのは、菅さんではありませんでしたが、それにしても、政治主導でもなんでも、一緒に仕事をする人たちを信用できるのかどうかと聞くこと自体、何かおかしいような気がします。

 そういうことは、お互いに黙っていても伝わってしまうことなのではないでしょうか。

 自分が信じなければ、相手も信じてくれません。

 菅さんの誤り、菅さんだけではなく、民主党の首相たちの誤りというのは、政治主導を掲げるあまりに、それぞれの分野のことを詳しく知っている官僚の方々を信用して起用しなかったことにあるのではないかと思えてきました。

 御厨さんは、復興会議の中でも、若手の方々の多い官僚チームの働きを評価しておられたわけですけれども、一緒に仕事をする仲間と見なすか、自分の邪魔をする敵と見なすかでは、相手の反応もおのずと変わってくるということを、一国のトップになる方は、わかっていてもよかったのではないかと思いました。

 自民党政治がよかったとは言い難いかもしれませんが、それでも、御厨さんは、自民党の中には政治家を育てるシステムがまだあったというように言っておられました。

 そこが、民主党との違いなのかもしれません。民主党には、今すぐに大臣になるべき人材がほとんどいません。それが、大変な問題で、今の政治状況の原因ではないかと思います。

 そんなことを論じていたかと思えば、最後のほうでは(155ページ以降)、「強いリーダー待望論の不毛」と見出しをつけて、「非政治的リーダーシップ」なるものについて対談されているのです。お相手は、牧原出(東北大学大学院法学研究科教授)さんです。
 ここでは、民主党には、自民党にあったような「名望家支配」がなかったが、2年半の間に政治主導を掲げて、政務次官や政務官たちがかなり必死に動き回った結果、現在では、それなりに経験を積んだ層ができてきた、それが長期的にはリーダー予備軍として考えられる、それは自民党にはなかったことと指摘しています。また、前原さんのように、多少失敗してもそれが致命的な失脚にはならずに、いまだ、総理候補としていられることもポジティブに評価されています。

 民主党政権は、学級会的だという指摘もおもしろいです。全員で何かを決めようとするから時間がかかるし、さらに、根回し的なことをせずに「ガチンコ勝負」。だから、堂々巡りを繰り返すけれども、最終的にはストーリーのある収斂したものになるのだというのが、復興会議の提言に現れているのだというのです。

 他におもしろかったのは、リーダーシップ論はフォロワーシップ論だという指摘です。先ほどの議論と関連しますが、強いリーダーシップを求めなくなってきているフォロワーがいるということで、これは、現在の大学生にもみられる傾向だそうです。結局、ものすごいカリスマ的リーダーを誰もが求めなくなってきている時代なのでしょうか。

 以下、本書でおもしろいとこの人が思ったところを引用しておきます。

御厨:民主党の人間は、とにかく貪欲じゃないからね。今ここでいろんな人間と付き合い、知識を貯め込めば、やがて羽ばたくときの力になるといった発想は、微塵もないし。

牧原:今、見えている景色の奥に、もっと大きな世界なり構造があるという、科学、とりわけ社会科学の視点。それがないですよね。持たなければ悪だとは言わないけれど、持っていたほうがおもしろいと思うのですよ。そのおもしろさが分かれば、いつかまたみんなが、そんな世界のことを語り始めるかもしれないのですが。

御厨:そのときの自民とはどうするか。

牧原:彼らなりの物語を組み立て、シンクロしてくるのではないかと、僕は思いますね。

御厨:なるほど。ただ、もしそこに行きつけば、旧世代は今度こそついていけそうにない。(164-165ページ)

◇フラット社会における現実的リーダーとは

御厨:復興会議で特徴的だったのは、私たちが半ば悲鳴を上げながら走っていたいわゆる親会議と、飯尾潤さんが担当していた検討部会で、議論の進め方に大きな違いのあったことです。検討部会では、メンバー同士がメーリングリスト(ML)をものすごい勢いで回したんですね。そこで情報を共有し、相互の助言や必要な場合には避難なども行いつつ、実際に顔を合わせる会議の場では、より高いレベルの話をするわけ。ちなみに、彼らは現場主義も徹底していて、被災地にもよく足を運んでいました。一応、親会議でもMLをつくったんだけど、残念ながら「それ何ですか?」の世界。
 これは、ただ機能を使えるか否かの問題を越えて、感覚的にそういうフラットなコミュニケーションを是とするか、そこに入っていけるかを示す、象徴的な事象にもみえるのです。私は新たなリーダーシップがうまれるとしたら、このMLを回せる世代が軸になるだろうという気がします。

牧原:具体的には、どの年代で線が引かれそうですか?

御厨:段階よりずっと下、五十歳近辺ではないでしょうか。
 ITの活用に関して付言すると、今度の震災では、ツイッターやフェイスブックが多いに使われました。しかもあの混乱状態のなかで、人心を惑わす煽動みたいなものはほとんどなかったし、あってもすぐにデマだと上書きされたでしょう。グーデンベルク革命に続くIT革命は、内実を伴って明らかに進行し、それも社会のフラット化に拍車をかける。フラットになりつつ、横に複雑に連鎖していくというのが、私の漠たるイメージです。

牧原:これから進むのは、あらゆる面で「異業種交流」を促進するフラット化だと思うのですよ。そんな世界で出てくるリーダー像を推理してみると、おそらく一人ではなくて、複数。それも従来の「親分」という感覚とは違う、「この人とならいっしょに歩ける」というような関係性になるのか。

御厨:派閥や業界だったら、親分が顔で演技したり、咳ひとつで市切ったりすることができたけれど、異業種交流が進んだ世界では、そんなものは通用しません。最終には、そこで語られる言葉が意味を持つことになる。
 一つ、わがゼミOBから聞いたフラットなコミュニケーションの例を挙げておきましょう。例の福島第一原発事故が起こった際、当初、放射線量などの発表の遅さが指摘されました。発表が早く正確になった裏に、事故によりドクター論文が書けなくなった、理工系の大学院生たちの貢献があったというのです。
 専門家ですから、データを「出し惜しみ」していることが、彼らにはすぐに分かった。そこで顔を知らない同士ネット上に集まり、論文を書くはすだった時間をデータ収集と分析などにあてて、その結果を協力して当局に送り続けた。われわれには分かっているぞーと、プレッシャーをかけたわけですね。

牧原:リーダーはいたのですか?

御厨:初めはいなかった。ただ、彼らの取り組みの連続のなかで、東大のある先生が最終的には責任を引き受ける結節点になったのです。そのネームバリューがあって、対応を改めざるをえなくなったわけ。このケースでは、自然発生的な仕組みがまずあって、そこにリーダーが「あと乗り」した。

牧原:フラット化すると、そんな例がそこかしこに生まれることになるのでしょうね。

御厨:彼らみたいな人間たちが、政治の世界に入ってくるとおもしろいのだけど。問題は、まだ政治がそことの接点を持てていないところです。

牧原:いずれにしても、旧来型のリーダーシップではもたなくなっていることだけは事実。ただリベラルで弁が立って、若くリーダーシップに溢れているという対応ですが、そろって四苦八苦している。転換の世紀にあって、リーダーシップそのものの「危機」が、グローバルに進行しているのかもしれません。
 名望家支配ではなく、ある種の横のつながりをベースに、小集団がついたり離れたり。その世界を引っ張るのが、フラット化社会の感覚を身につけたリーダーということになるのでしょう。

御厨:政治が、早くそんことに気づいてほしいですね。(165-168ページ)

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