南極でも、昭和基地ではないもっと奥深いドームふじ基地での話。
『南極料理人』
食べ物を扱った映画とか漫画とかエッセイとかが、この人(=私)は結構好きなんだと、最近になって自覚してきました。
はい、遅いですが。
古くは、子どもの頃から読んでいた『美味しいんぼ』とか、よしながふみの『きのう何食べた?』とか。
ええ、愛読していると言っても過言ではない。
なのに、6巻まで持っているこのシリーズの7巻がすでに出ていたことを、今知った~~。
それで、この映画の話。
日本からドームふじ基地は、14000キロの距離にあるそうです。
映画の冒頭の解説によれば、あまりに寒いため、ペンギンやアザラシはおろか、細菌も生息できないので、細菌性の病気にもかからないんですって。
この基地へ赴く隊員は全部で8名。
原作は、そのうちの一人である料理担当の西村さんが書かれた実話に基づくものだそうです。
で、主人公も当然この西村さんです。演じるのは、堺雅人さんです。
隊長は、気象学者だったと思います。あと、雪氷学者とその助手的な大学院生。大気の担当。さらに、メーカーから派遣されている自動車担当。通信担当、医者、それから調理担当。
雪氷学者は、氷に穴を開けて何千メートルも深いところから掘り出した氷の中を分析するなどする仕事で、この人にだけは大学院生のサポートがいるんですが、ほかの担当は一人しかいません。
みんな、それぞれの仕事をする最小限の体制での、1年を超える南極、それも、より内陸で高地(富士山よりも高い標高!)での任務なんですよ。
そんな中、毎日の楽しみで、かなり大きいと思われるのは3度供される食事です。
で、かなり、ちゃんとしたご飯を食べておられるんです。
映画の最初は、刺身、天ぷら、たぶん、ブリの照り焼き、その他の副菜などを一度の食事で食べておられます。
別の日のヒルゴには、炊き立てのおにぎりをいっぱい握って、海苔をつけて、アツアツのトン汁らしきものと一緒にすごい勢いで召し上がっておられます。
それが、とてもおいしそうなんです。
おにぎり、食べたくなります。
具は、北海道産いくら、、シャケ、梅干し、牛大和煮、たらこなどなど。
留意点は、気圧が低いので、水の沸点が85℃程度しかなく、麺類やご飯をそのまま茹でたり炊くと芯が残ってしまうということ。
また、食材のほとんどが缶詰、冷凍食品、乾燥品なのだそうです。冷凍するとダメになるこんにゃくは、持ってきていないので、トン汁にもこんにゃくは入りません。
調理担当の西村さんは、海上保安庁でも調理を担当されていたようで、8人分の食事を作る様子はすばらしいです。
特に、普段のご飯だけではなく、ときどき隊員の誕生日を祝うとか、季節行事に合わせてのご馳走を作るときなども、一人で豪華レストランのメニューを出したりもされるのです。
最後頃に、ラーメンを自分で打って作る場面もありますが、こんなこともできちゃうあたり、さすがに、ひとりしかいない調理担当として、エクセレントな実力の持ち主です。
南極のこの基地での毎日は、非常に単調で、特に何があるわけでもなく、もちろん、基地には多少の娯楽のための準備はありますが、外は常に酷寒ですから、不用意に外出できないし、出たところで何も居ないという不自由な環境です。
時代が少し古いので、今では、通信状況も変わっているのかもしれませんが、当時は、家族との連絡も電話が一台置いてあるだけで、それが一分750円だそうです。
そんなことで、多くの隊員は、家族が居て、子どもがまだ小さかったりするんですが、そんな家族を置いて、単身赴任、それも1年を超えて、一度も帰ることもなく、居続けるって、すごいなと思いました。
映画の舞台としては、だから、そういう限られた酷寒の地での任務を淡々とこなしているとか、雪原しかないとか、あとは、基地の中の様子しかないとか、あまり動きや景色が楽しめるわけではないのですが、食事を主軸に、ほんわかした人間模様とか、狭いところに長く一緒に暮らしていたら当然発生するだろうイザコザとかを丁寧に描いていて、まぁ、なかなか楽しめました。
しつこいですが、食べ物が中心です。
いろいろなリクエストに、上に書いたような様々な制約のある中でも、答えることのできる調理担当の上ではさすが。
あと、観ているとおいしそうな場面を何度も見直してしまいたくなるところと、おいしいおにぎりを食べたい欲求が数日刺激され続けているところが、煩悩を呼び起こす作品だと思われます。
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