同じ言葉を使っていても、意味するものが違っている、が、気が付かない、多くの場合は。
『未闘病記 膠原病、「混合性結合組織病」の』
笙野頼子
難病のひとつである病気にかかっていたことに気が付き、それで、何十年もの間、疑問に思っていたことに説明がつくような経験、痛みを初期の作品から表現していたことに後から気が付く経験。
怠け者だと非難され、罪悪感を持ち、「疲れ」の指し示す意味がかなり幅を持つ、あるいは、質的な違いもあることに気が付かずに生きてきてしまっていた半生。
膠原病は、いくつもある自己免疫疾患を総称するもので、厳密には膠原病という疾患はない。
結合組織とは、からだの部位をつなぐような性質の部分なので、たとえば、関節とか、リンパとか、全身にあり、どこに症状が出るのかも、ひとそれぞれ。
わかりやすい説明ができないという点でも、難しい病気です。
本書では、見た目に病弱そうでもなく、外に出て活動しているときには精力的に見え、自身でも病気だとは思わずに生きてきた作家の、病識を得てからこれまでの、また、これから先を考えていく記録とでもいうものでした。
「疲れる」「痛い」などは、もともと健康な人が、一時的な辛い状態を表現する言葉として頻用されるものですが、常に疲れている人、常に痛みを感じている人などは、それが普通なので、なかなかたまにしか痛くない人には理解してもらえない状態があるのだと思います。
「疲れる」は、易疲労性と言われる状態ではない人には、休めば治るものだろうし、「疲れるから○○しない」という種類の禁欲を、たぶん、理解できないでしょう。
いろいろとシンパシーも感じつつ、やはり、わからないことも多い病気の状態を、考えさせられました。
病気の人は、こういう感じである、というのも、かなりの場合、偏見や一定のイメージに凝り固まっていると思います。
誰もが、いかにも弱そうな、常に弱弱しく暮らしている病人ばかりではないし。
外からは見えない病気の人も、たくさんいて、多くの誤解を受けながら、それに気が付かずに、つらい思いをしつつ暮らしているのかもしれません。
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