【ネタばれ注意】焼肉ドラゴン
この夏の映画なのですが、なかなかな内容でした。
すごい先入観なのですけども、大泉洋が出ているから、おもしろい映画なのだと思い込んでいました・・・。
もちろん、おもしろい要素というか、興味深い映画ではありますが。
ただ、コメディではない。
そういうおもしろい映画ではありませんでした。
在日コリアンの家族の物語。
お父さんが1世で、大泉洋たちは2世。
ちょうど、大阪万博の開催された1972年の前後のお話です。
中心となる家族の中で、さまざまな困難が押し寄せている印象ですが、公的機関などの相談現場に現れる事例も、多くは、複合的な要素を含んでおり、ひとつの困難が別の困難を引き寄せるというか、ひとつの困難が別の困難の原因になっていることで、からまった糸のような様相になるのは、ここでも共通するのかもしれません。
在日コリアンに対する差別から、いじめが起こり、いじめを理由として不登校になり、不登校やその理由がいじめであると認識しながら、無理やり学校に行かせ別の学校に転校することを許さない父親。
もし、そこ(日本人社会)から逃げれば、他に生きていく手段がないとの、自分の経験からの信念なのですが、それを若い子どもが理解するのも、実践するのも、難しいことだと思います。
こういうの、生存バイアスというんでしょうか。
お父さんは、それこそ、石に噛り付いて、差別を乗り越えて、ひとつの店を繁盛させ、子どもたちを育ててくることができたのですが、この段階で乗り越えられなかった人もきっといたのだと思います。
この家族、お父さんの子どもは4人、そのうち、3人姉妹と弟という構成です。姉妹の関係も、愛憎半ばというか、関係そのものが非常に濃いように感じました。
同じ性別で、年頃も近いと、親や親せきや近所の人から比べられてしまうことは、割と広く経験されていることかもしれません。容姿や学校の成績、その他の女性としての「得点」みたいなものも、子どもの頃は遠慮なくコメントされますよね。
※大人になっても、言われることはあるけど、ダメな世界を経験していない人はわからないかもしれません。日本社会で、数年以上大人を経験していれば、ほとんどの方は経験しているはずですが。
この映画でも、長女と次女は、そういう比較の中に置かれていました。たぶん、比較優位のほうは、そんなに感じなくても済むコンプレックス。
ただし、比較優位のほうも、表に出しづらいだけで、実際は、自分にはない美徳を相手に見ているものかもしれません。
姉妹で、同じ男性を取り合うことなど、むしろ、できるだけ避けたいことなので、無意識にも、自覚的にも、そういうことにならないよう、気を付けてきたように思います。
幸い、姉妹でキャラ(?)が異なると、好みの方向性もかなり異なってくるので、それほど、苦労しなくても、なんでもない場合もあると思います。
ただ、「姉の好きな相手を好きになる」みたいな、「多くの人が好きな人が好き」といった好みの場合や、姉妹間の感情(コンプレックス)が根底にあって、それを乗り越えるために、相手(姉)と同じものを欲するような、理性的には避けるべき状況に、より積極的に入り込んでいく場合、それは、姉への対抗心でもあるのかもしれませんが、自傷行為のように見えました。
比較優位に立つ姉の場合も、脚を引きずる障害のために、必要以上に自己卑下もあり、本当の気持ちを抑圧しながら、生きることをかたくなに選んでしまう。これも、一種の自傷行為なのではないでしょうか。
こんなことを表現しながら、家族に対する愛情を表現している家族が描かれているように、感じました。
大陸の朝鮮系のひとびとと、在日の方々は、同じではないのでしょうが、韓国映画やドラマを見ていると、感情表現が、日本人に比べてはるかに激しいと思います。
焼肉ドラゴンの家族も、日本に暮らしながら、感情表現はかなり激しいと思いました。
大阪など関西では、日本人同士の人間関係も、もっと近いような印象を持っています。ある意味、相手にズカズカ入っていくような。プライベートなことも聞いてきたり、「結婚しないとダメだ」とか、割と本音を口にするような印象。いい面も当然あります。
もちろん、関係性を踏まえた上なのでしょうが。
一番印象に残っているのが、姉妹関係でした。
さまざま悲惨なことが、これでもか、と起きるのですが、反対に、何も起こらない日本の家族からは、こんな複合的困難を抱えた家族のことを、すんなり理解するのは難しいかもしれません。
何も起こらない家族って、そんなにいないと思いますが、民族差別がないだけで、どれだけ、気楽に暮らせるか。
このことは、40年以上経っている現在でも、克服できていないヘイト・スピーチ問題などを考えると、すぐにわかることだと思います。
なんだか、まとまりませんが。
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